六華だより

吉田 真 富山県高岡商業高校野球部監督

第94号

プロフィール

吉田真(ヨシダ マコト)南51期 36歳

富山県高岡商業高校 地歴・公民科教諭 稚内市出身

札幌市立八条中学校卒-札幌南高校卒(野球部副主将/6番ファースト)
北海道教育大学札幌校卒(硬式野球部所属)

教員赴任校
・札幌創成高校(2005~2008/4年/野球部コーチ)
・富山県立しらとり支援学校(2009~2010/2年)
・高岡商業高校(2011~現在/8年/高岡商業野球部監督)

高校時代の思い出

野球部の練習後は個人練習の時間でしたが、雪が積もる時期には、同じ学年のメンバーでほぼ毎日、体育館でバレーボールやサッカーに興じたことを覚えています。今の時代でしたら、叱られるかもしれませんね。札南の良さは、変な上下関係がなく、またチームの仲間同士が互いを認め合うことができるところだと思います。それぐらい、仲が良かったのだと思います。

やはり甲子園のことは強く印象に残っています。対戦したPL学園・朝井投手(元巨人)の直球は、それまで見たこともないくらいの切れの良さで、全く手が出なかったことを覚えています。また、ヒットを打った打席は、打球が右翼手の前に落ちるまで、私が1塁に到達するまでがスローモーションでした。人生の中で他にない経験です。今江君(現・楽天イーグルス)のレフト前ヒットは、南北海道大会では誰も手を出さないコースだったので、驚きでした。いずれも、甲子園大会のレベルを痛感した瞬間でした。

野球部監督になった理由

高校入学時の将来の夢は、恥ずかしながら「プロ野球選手」でした。入学後、最初の進路面談で、担任の先生に笑われたことをよく覚えています。案の定、高校で野球をしていくうちに自分の実力のなさを痛感することになるのですが、札南野球すなわち「チームに関わる全員が自分の役割に尽力して勝利を目指す野球」を経験する中で、「選手」として野球を続けることよりも「指導者」として野球に携わりたいと思うようになりました。スター選手を揃えた私学ではなく、選手・マネージャー・スタッフが一丸となって目標に向かっていく「組織力」を作っていくことに魅力を感じたのです。
そこで、大学は北海道教育大学に進学し、卒業後は高等学校に勤める方向を選びました。
最初に勤務した札幌創成高校では、野球部コーチとしてたくさんのことを学ばせて頂き、縁あって富山へ転勤した後は、特別支援学校に勤務させて頂くなど、様々な経験をさせて頂きました。現在の高岡商業高校に勤めたのは2011年から、野球部監督になったのは2013年の秋からです。

監督としての苦労話

監督というものは、常に「決断」を迫られます。それは、日々の練習メニューなどの小さなことから、チームの根幹や生徒の将来に関わる重大なことなど、多岐に渡ります。
私は、元来優柔不断な人間ですので、就任当初はとにかく毎日「決断」できず、迷ってばかりいました。時には「決断」しなければならないことに対する恐怖から、グラウンドに足が向かない時期もありました。
ある時、懇意にしている経営者の方から、「組織のトップは、仮に迷ったとしても、信念をもってがむしゃらに前を向いて進めば、後ろ(組織の構成員)は必ずついてくるものです」とのお言葉を頂戴し、「迷う前に、まずは何事もやってみることから始めよう」と思うことができました。この年に、指導者として初めての甲子園大会出場を果たすことになります。今でも迷うことはたくさんあります。ですが、「決断」はしなければなりません。それが私の仕事だからです。よりベターな「決断」を重ねるためにも、自分自身の感性や人間力のようなものを磨き続けなければならないと考えています。

嬉しかったことや良かったこと

私は、チームを作る上で2つのことに気をつけています。
それは「目標に対して本気になること」と「自立したチームになること」です。
本校野球部では、毎年チームの目標を立てますが、私は生徒たちに、事あるごとに「目標に対してどれだけ本気で取り組んでいるか」を問い続けます。目標を立てるチームは全国にいくらでもあるけれど、その目標を達成することを最後まで強く願い続けるチームはどれだけあるだろうか。そもそも、目標を立てるだけで満足しているチームもあるだろう。途中で諦めてしまうチームもあるだろう。それをチーム全体で忘れることなく、一つの目標のために何ができるか考える。それは選手として試合に出場することだけではないはずです。
次に、生徒たちは必ずといってよいほど指導者、特に監督のことを気にしています。その段階をいかに克服するか。野球の試合でも人生でも、生徒たちは最後には私たちの手を離れ、自分自身で勝負していかなければなりません。そのためには、ある一定の段階で「自立」させ、自分たちで考え、判断する選手・チームにしていく必要があります。
昨年のチーム(選手権大会ベスト16)は、なかなか自立できない幼い部分を持ったチームでしたが、主務と主将が中心となって3年生をまとめあげ、自立した逞しいチームになってくれました。野球の結果よりも、生徒たちが目標に向かって本気で考え、自分たちで判断することで、よりよいチームを作り上げてくれたことが、私にとって最も嬉しい瞬間でした。

これからの目標

毎年、夏の大会が終わって新チームになると、夏までのチームと比較することや出来ないことばかりをクローズアップしてしまいます。私の悪いところであり、また指導者の多くが陥りやすいことでもあると考えます。

本校野球部は、昨年の選手権大会でベスト16に進出し、9月に開催された国民体育大会にも出場させて頂きました。そのため、新チームには、秋季大会への準備期間が短かったこともあり、多くのことを要求し、本当に必要なアドバイスや指導が出来ていなかったと反省しております。
私たちが指導する野球部は、あくまで県立高校の野球部であり、入学してくる生徒たちは毎年野球のレベルも違えば、気質も異なります。もちろん、志は高く持ちたいものですが、目線はあくまで低く、生徒たちに必要なことは何か見極め、共に考え成長していく姿勢を持ちたいものです。
現在のチームの目標は「日本一」です。まだまだ発展途上ではありますが、生徒たちと共に成長して参ります。