六華だより

脱クレヨンしんちゃんからの北海道移住ドラフト!

第94号

五十嵐慎一郎(南52期)

 52期の五十嵐慎一郎と申します。 「北海道から、世界をちょっぴり面白くクリエイティブに」と、株式会社大人という会社をやっております。高校卒業後、紆余曲折を経て、東京大学建築学科を卒業して不動産のベンチャー会社に入社しました。起業したのは2016年。店舗や地域をはじめとした空間・イベントの企画やプロデュース、WEB制作といった仕事をやらせて頂いております。

 突然ですが、「クレヨンしんちゃん化現象」という個人的な仮説を紹介させて頂ければと思います。

 すすきのに「JIS」という出会い居酒屋があります。(テレビ番組の)「マツコの知らない世界」でも特集されたほど、500人が入るようなおしゃれなラウンジに若い女性が100人と行列しているびっくりなお店です。出会い居酒屋なので女の子は無料となっていて、出会いというよりもタダ飲みに来ている側面もあるのだそう。話してみると、その通り彼女ら自身お金がなく、同世代の男は車のローンを返すのに必死で、やはりお金がない。職場と自宅と、大通りすすきの以外に、世界が全然ないのです。東京のことやほかの地方のことには興味がないし、別にそんなのどうでもいいという若い女性がこんなにも多いのかということに驚きました。

 なぜ「クレヨンしんちゃん」かというと、20代の女性らが、寝る前は「クレヨンしんちゃん」などのアニメを見ているという話になったからです。(サンプル数がかなり偏っているのであくまで一例にはなりますが笑)一体どういうことだろうと考えると、やっぱり、自分の心地よい、慣れ親しんだコンフォートなゾーンから出ていない若い世代が、実は想像以上にたくさんいる、ということなのではないか、と、ふと恐怖に近い感覚を覚えました。外界に興味を持たず、現状に満足している道内の若者の「クレヨンしんちゃん化現象」がじわじわと進行しているとしたら、あくまで仮説ですが、北海道の未来は、あれ!やばいんでないかい、と。

 前職時代から、東京でコワーキングスペースを運営させて頂くなかで、同世代の起業家やクリエイター、フリーランスと交流する日々を経験しました。札幌に来てみると、スタートアップのシーンはじめ、なにか新たなチャレンジをしているプレイヤーの少なさに、圧倒的な格差を感じます。南高の同世代も、起業しているやつらは、みな道外に。過去をたどると戦後、公共事業と支店経済で成立した北海道。いまや札幌では市街地オフィス床の10分の1をコールセンターが超えるまでとなり、ITも含め、安い人件費がウリの東京の下請け工場という性格がますます色濃くなってきているのが事実ではないでしょうか。フロンティア精神って、なんだっけ。。。

 北海道・札幌のビジネスシーン・カルチャーシーンを元気にするのは、ひとえに、何かを起こす「人」だから「人」に立ちかえろう!と考え、ベンチャー企業数社と一緒に「札幌移住計画」を立ち上げ、移住イベントを開催しはじめました。そして、2018年には、とうとう『北海道移住ドラフト会議2018』なる企画を開催させて頂いたのです。

 『北海道移住ドラフト会議2018』とは、その名のとおり、プロ野球のドラフト会議に見立て、人材(移住者)を求める企業や自治体を「球団」、移住を検討している人を「選手(移住志望者)」として指名会議(ドラフト会議)をするイベントです。移住ドラフトという名前ですが、あくまで壮大なコントとして、自分なりに北海道との繋がりをつくったり、関わり方を見つけるイベントとなっております。

 札南のみなさまはじめ、道外に出た方と話すと、

「いつか北海道に住みたい。もどりたい。」
「北海道に貢献したい」

 
という想いがあることに気づかされます。
 しかし、実際にそれを現実にできている人は、そのごく一部。家族や仕事のことを考えると、なかなか、一歩を踏み出すのは大変なもの。特に仕事の面では、給料は下がるし、やり甲斐のあるスケールの大きな仕事が難しい。というのは、大問題と言えるでしょう。
 とはいえ、それはあくまで一般論。解像度をあげて北海道を見てみると、一応、稼ぐ企業は稼いでいるし、グローバルな展開だってしている訳で、宇宙産業もあれば、めちゃくちゃ稼いでいる一次産業もあるし、意欲的なベンチャーも、起業家だってフリーランスだって、少ないながらもいるっちゃ、いる。

 いま、働き方が多様化し、場所を選ばずに働くことが可能になってきているのは、間違いのない事実。移住はもちろんですが、2拠点生活、リモートワークで北海道に関わる人も増えています。お見合い結婚のように、いきなり転職移住という選択肢以外もあってよいはず。まずは、デートから。いきなり移住ありきではなく、北海道と関わる一歩を踏み出すキッカケとして、北海道で様々な活動をしているオモロイひと・企業・自治体と出会うキッカケの場をつくることができないか、というのがこの企画のはじまりです。

 今回、球団としては、シ・リーグ(City league)に石狩市や下川町はじめ6市町村、カ・リーグ(Company League)は、大空町に新たな高校を新設する高校魅力化プロジェクトや、北海道の地域仮想通貨をつくるベンチャー企業など6団体がエントリー。

 一方、選手側は、関東中心に果ては喜界島までの方々からの応募を頂き、面談を開催。当日は選抜された24名が札幌の会場に集結。会社員、起業家、フリーランス、料理人、ダンサーとさまざまなバックボーンの北海道LOVERが一同に集いました。(南高出身も数名出場しています)。スライドを用いてプレゼンする方や、1分間のPRタイムで一言も話さず踊る方、動画での参加など、個々人が自分のキャリアと熱量を球団にアピールします。

 開催の2日間かけて、ラジオ体操に始まり、球団・選手双方のプレゼンテーション、マッチングタイム、飲み会(大事!)と、お互いをより知ることができるよう交流を深めていきました。

 2日目には、メインイベントの指名会議が開催されます。会場はホテルモントレエーデルホフの宴会場。「探偵はBARにいる」の撮影でも使われたという会場では、開始前から緊張は高まります。 

 なぜか、始球式から始まったこの指名会議では、野球のドラフト会議と同様、各球団が希望する選手を選択指名し、重複した場合にはくじ引きを行います。予想外のドラマが起こるのがドラフト会議の醍醐味、運命を決めるくじ引きは大きな盛り上がりを見せます。指名状況に応じて、刻一刻と状況は変化するので、各球団真剣な表情でミーティングを繰り広げます。

 相次ぐ氏名の重複に、指名会議は大盛り上がり。2時間を超える熱戦?ののち、12球団がそれぞれ2名づつ指名選手が揃い、ドラフト指名本会議は終了しました。(協賛のAIR DOさんからは一位指名の方に「決意の片道航空券」がプレゼントされました)。

 ドラフト会議の二日間、球団や選手、運営と行った立場を越えて、北海道が好きで「何か」を起こしたい人が集結した、そのエネルギーは凄まじいものがありました。

 開催後、指名された選手らは、各球団と交渉し実際にその街や企業を訪問する「キャンプイン」を行っています。2019年1月時点で、もうすでに、なんどもその街を訪れ、もはや、実際に移住に向けて本格始動していたり、遠隔でのプロジェクトをスタートさせている選手も続々と出現しています。2019年度のドラフト会議に出たいという球団と選手の問い合わせも、フライング気味にチラホラ来ています笑。毎年開催していくことでどんどん卒業生が増えていく、、、このイベントが向かう先はいったいどこなのか。きっと5年後くらいには、北海道中でドラフト卒業生が大活躍している、はず。

 実は、ドラフト会議の開催前月9月に、モンゴルを訪問しました。驚いたのは、ウランバートルの経済発展の一方で、国民の3分の1が、未だに遊牧生活をしていること。羊や馬を連れて日々移動しゲルで寝る、1000年と続くライフスタイル。電気・ガス・水といったライフラインなんて、もちろんある訳もなく(一部、ソーラーパネルをゲルの屋根に載せ、携帯電話を使ってたりもしますが)。ちょうど、北海道の震災後だったこともあり、「この人たちは、世界で、天災や通貨危機があろうが、戦争が起ころうが、ぜんぜん関係なく、今までもこれからも悠々と暮らしていくのかもしれない」と、馬に乗りながら、感じたりもしたわけです。

 働き方が多様化し、近年増えているフリーランス。場所を選ばずに働くことのできるそのスタイルは「ノマドワーカー」と呼ばれたりもしますが、「ノマド」は「遊牧民」の意味。時代から取り残されたかに思える遊牧民のライフスタイルも、実は現代に形を変え、デジタルノマドとして、世界に波及しているとも言えるのかもしれません。

 会社勤めしている方でも、副業の解禁、プロボノもボランティアでも、ちょっとした相談からでも、北海道のプロジェクトにアサインするチャンスは、めちゃくちゃたくさん転がっています。きれいな水と空気、豊かな自然とおいしい食事、生物として最高の環境が整ったノマドライフ最強の土地北海道に、札南出身のユニークで優秀な方々が、もっともっと、関わることで、北海道の新時代が生まれるはず、きっと。

  「北海道移住ドラフト会議」はこれから毎年続けていくので、ぜひ、これをご覧になっている南高出身のみなさまが、仮に、2019年度は、選手として、はたまた球団側で、イベントボランティアとして、関わって頂けたら嬉しい限りです。(スポンサーも、、、、絶賛募集中です)

 気になった方はぜひ、以下リンク覗いてみて下さい。

 どこかでお会いできることを、たのしみにしています!

北海道移住ドラフト会議:https://hokkaidoiju.com/

株式会社大人:http://otona.be/

 

追伸:
今年の5月に、とある企業と共同で「北海道バー(仮名)」をオープンさせます。場所は南1西1にあるビルの一角。さまざまなゲストを呼んでのトークイベントやビールファンディングといった企画目白押し、北海道に新たな風を吹かす出会いに満ちたお店にするので、ぜひぜひあそびに来て下さいませ。

五十嵐慎一郎プロフィール
1983年小樽生まれ

株式会社大人 代表取締役社長
NoMapsプランニングパートナー
札幌移住計画主催
北海道移住ドラフト会議実行員会さーもんず代表