【フジロック’21 ステージから奏でる希望2】ミュージシャンはやめられない。
AO YOUNG / 青木 篤 (南43期)
DACHAMBO(ダチャンボ)という楽団を結成して、20年以上経ちます。
ひたすら旅を続けて、演奏を繰り返し、その瞬間にしか訪れない音楽のミラクルを、沢山の人達と共有してきました。
TVなどのメディアには一切現れませんが、フジロックやライジングサン等のBIGフェスから、山奥のレイヴパーティー、海を越えて、オレゴンの皆既日食フェスや、ニンビンのマルディグラス、世界一クレイジーな野外フェスと言われるバーニングマンにも、日本人バンドとしては、初めての出演者としての快挙を成し遂げているのですが、もちろんアンダーグラウンドの話なので、知る人ぞ知る存在として活動してます。
とにかく、日本を何十周したか分からないほど旅を続け、年間100日以上演奏し続けた日々も、コロナによって足止めを喰らい、現在ほぼ無職といった状況で流石に笑えません笑。
思えば南高入学時から、バンドを組んで音楽をやることしか頭になかったガキでした。
勉学はおろか部活にも入らず、日々ライブハウスに通ったり、知人のガレージで練習に明け暮れる生活だったのを思い出すと、背伸びしたまま、かれこれ30年は何も変わってないことに驚愕します。
しかし、その中で出会った沢山の仲間や、見て来た景色が、今の自分を導いて来たと思うと、感謝の気持ちしか出てきません。
そんな出会いの中でも、まさか憧れのミュージシャンが高校の先輩だった。なんてこともあり、34期の勝井祐二さん、31期のエマーソン北村さんとは、何度も同じステージで共演させて頂いた、感無量なご縁のひとつです。
そのようなオンザロードの日々も、今回のコロナ騒動が始まり、回転が一気に止まってしまったのは、残念でなりません。
どこかに所属する訳でもなく、やりたいことだけを追求しているミュージシャンには、表現活動の場を失い、バーチャルな方向転換を余儀なくされているようで、もどかしい思いです。
ライブ推奨派としては、楽器の振動、共鳴を肌で感じとって欲しい。周りの人たちと感動を共有したり、色んなことに感謝できる大事な現場だと思ってます。家の小さいスピーカーで再現されるものとは、全く違うと。
特に勝井さんや自分も好む即興音楽は、その場のその瞬間にしかできない音楽をやっているのです。生で見たらとてもスリリングですよ。
個人事業ミュージシャンにとって暗黒の時代となった今、ライブハウスや野外フェスにも悪意の目が向けられて、貴重となった数少ないステージも、ノーストレスで演奏できたことはありません。開催されるフェスにも演者にも、とても大きな責任を背負わされている気がします。
それでも、ほとんどのフェスが中止となった2021年、フジロック開催だけが自分に希望を与えてくれました。
東京で緊急事態宣言の中、去年のフジロックは開催されました。
事前のPCR検査、移動ごとの検温、消毒、そして禁酒というフェスにしては、この上ない堅苦しさで開催されたが、スタッフの眼は、いつも以上に真剣で、絶対に成功させる!(無事に終わらせる)という気合いが、バックヤードに溢れていた。
そういう気合いは、もちろん演者にも伝わる。普段より割とピリピリした感じで舞台裏は進行していくのだが、かといって、勝手知ったる13回目のフジロックなので、自然と気負いはなく、いつもよりちょっとハイテンションでステージに向かう。
フィールドオブヘブンという山奥のステージは、DACHAMBOが初めて出演した2005年から大のお気に入りの場所で、アメリカのミュージシャンからも聖地と呼ばれる程の、毎年マニアックな世界的ミュージシャンが、濃厚な演奏を聞かせてくれる素晴らしいステージです。
思い入れの多い、このステージに立てる喜びを胸に、ステージで自分が見たものは、客席は全員マスク!そしてディスタンス!
なんだか異様な雰囲気を感じながらも、いつも通りの演奏をと心掛けて、コール&レスポンスで盛り上げようとしたところ、客席からは無音。。優しいお客さんから「×」のジェスチャーをされて、初めて客席での発声禁止を知ったのでした。
それでも演奏はハイテンションのまま、最後まで楽しくできました。
今回の入場者数は例年より少なかったのですが、YouTubeの生中継では3万5千人の視聴者と、ツイッターではトレンド12位まで浮上したことを後から聞き、フェスのバーチャル時代の到来を複雑に感じつつも、隠しきれない感無量でいっぱいでした。
1日目はアコースティックセット、2日目はDACHAMBOの出演のみでしたが、急遽3日目も陽性で出演できなくなったアーティストの枠を、セッションで埋めて欲しいと要請をいただき、やはり最初に相談に乗ってもらったのは勝井さんでした。打ち合わせも特になく、即興演奏で繋ぐ60分。勝井さんの出す音やプレイを横目で驚きながらも、楽しく演奏させてもらいました。
尊敬するミュージシャンと大舞台に立てるというのは、同じ高校とか全く関係なしに、手放しでシビれる時間です。
このような経験ばかりを繰り返し、20年以上ひたすらぶっ飛んでいた自分にとって、
今さら音楽を止める選択肢はどこにもなく、くたばるまでギターを弾いて歌ってるように思えます。
コロナ禍になって突然の足止めを喰らっても、時代がどんどんバーチャルに向かっても、
今まで続けて来た旅のおかげで、日本中世界中の仲間たちと繋がることができたのも大きな財産です。
だから続けたい。もっと見たことのない景色が待ってると信じて。
最後に宣伝ですが、コロナ渦中に立ち止まっていられる訳もなく、全国の仲間達の協力により、
クラウドファンディングでソロアルバムを制作しました。
20名以上のミュージシャンと沢山の仲間達の愛で完成された、この時代に元気が出るような作品です。
ご興味ありましたら、是非とも下記よりご購入をお願いいたします!
視聴はコチラ
https://soundcloud.com/ao-young
AO YOUNG/青木 篤(あおき あつし)
国内屈指のJAM BAND、DACHAMBO(ダチャンボ)のフロントマン。
バイオディーゼルBUSに乗り全国のフェスやパーティに駆けつけてはシーンを騒がし、『FUJI ROCK FESTIVAL』『朝霧JAM』『RISING SUN ROCK FESTIVAL』等の国内主要ビッグ・フェスを総ナメに。ついにはフェス番長(YAHOO認定)の称号までいただき、パーティーシーンに無くてはならない存在として活動を続けている。反面、ソロ活動では歌を唄うことを中心に、脳内風景を表現し続けているジプシーでもある。
第100号 の記事
2022年3月1日発行