六華だより

まおい学びのさと小学校:2023年4月開校に向けて

第100号

細田 孝哉(南30期 )

 2021年11月30日の北海道私立学校審議会で「まおい学びのさと小学校設置計画」が了承されました。まだ手続きとしては2022年9月末までに道庁総務部学事課に学校法人・小学校設立申請をして私学審議会の了承・認可を得なければなりませんが、最大の関門を超えて、2023年4月開校が見えました。長沼町からは2019年度で廃校になった北長沼小学校舎の無償貸与の約束をいただいています。地域に根ざした学びを大切にする、北海道にこれまでない新たな発想の学校で、共感を得た多くの皆さんのご寄付で設立する「市民立」の私立小学校になります。

 5年ほど前から取り組んできた、というより35年以上前から取り組んできた新しい学校づくりが実を結ぼうとしています。実を申せば、私は高校在学中から詰め込み受験勉強に疑問を感じ成績はさっぱり、上手くもないのにサッカー部に逃げていました。教育学研究をする叔父の助言で「学びとは何ぞや」「本来の学校教育のあり方は?」を追求するために教育学を志すことに。北大教育学部に、当時の共通一次試験をボーダーでくぐり、二次試験で逆転滑り込みました。卒業後は、研究より学校現場を知らねば何も語れないと思い、札幌市の中学校教諭を3校12年、札幌市立高校に18年(途中2年間大学院に派遣研修)、特別支援学校7年目で定年退職を迎えようとしています。教員生活の始まりと共に、北大教育学部名誉教授の鈴木秀一先生が始めた「新しい教育を考える研究会」(現認定NPO法人北海道自由が丘学園・ともに人間教育をすすめる会)に参加、1990年代半ばには夕張の廃校での中高一貫の認可校をめざす取り組みもありましたが、ならず。6年前に先生が亡くなり、誰がこの学校づくりを引き継ぐのかと考え、特別支援校転勤でサッカー部指導もなくなり時間ができ(阿弥陀様の采配かと勝手に思い)、自分がやるしかないと決意したのです。2年前には共感する人たちが集い、学校づくりと地域づくりをめざすNPO法人まおい学びのさとを設立し、精一杯活動しています。

 さて、めざす学校は、子どもたちを中心に、知性の自由、感情の自由、人間関係の自由を大事にします。子どもたちの生来の知的好奇心を生かし、学校から地域に飛び出してさまざまな体験をして、協力し合って知りたいこと・わかりたいことを探求していきます。学びの過程で、気づき・感動を味わい、感情的にも豊かに育ち、自己肯定感が育まれます。そしてそれは学校教育の始まりである小学校からでなくてはなりません。

 公立小学校でもできることじゃないかと言われると、残念ながら、公立学校にはいわゆる成績評価があり、それが子どもたちの格付として作用し、点数・成績だけが子どもたちの目標になっているのが現状です。学年が上がるにつれて、学びの感動や内容、人間関係も吹っ飛んで、成績数値だけが気になり、中学校になるとそれが高校入試のクーポン券のような意味を持つことになります。私たちの学校は数値評価をしません。「結果」ではなく、学びの過程で生まれるさまざまなドラマを大切にして、子どもたち同士が互いの個性や力の発揮を認め合い、大人たちもそれを見守っていきます。公立では難しい思い切った教育をデザインします。

 でも、よく「世の中は競争社会だし、成績がなければ子どもたちは勉強しないだろ。夢みたいこと言うなよ。」と言う人もいます。確かに世の中には競争の側面・場面も多々ありますが、それだけでないはずです。多様な人がいて、いろいろな仕事・役割で個性や能力を生かして支え合っているからこそ社会は成り立っているのではないでしょうか。「今だけ、金だけ、自分だけ」の価値観とは違う共生を大事にする教育を考えています。私たちの学校は宿題もテストもありません。生来の知的好奇心を信頼し、刺激的な環境を用意してあげることで、自ずと子どもたちは学びに向かって行きます。実際に30年前に認可を受けてこのような教育実践を積み重ねてきた和歌山県の私立学校「きのくに子どもの村学園」があり、そこをモデルとしています。

 時間割を、「かず」「ことば」の基礎学習と、体育・芸術系の自由選択科目のほか、約半分の時間を「プロジェクト」という学習形態にします。「プロジェクト」は、いくつかの科目にまたがる教科横断的な体験的・協同的な探求の時間です。1~6年生まで縦割りで、年度通して所属するテーマを4種類ほどの中から1つ、一人一人が選択します。テーマは「北海道」「料理」「ものづくり」「演劇」を想定しています。たとえばテーマ「北海道」では、北の大地の身近な生き物に触れ、その中で長沼町特有の羊に焦点を当てて探求していきたいと考えています。地元長沼町の農家に協力をいただき、飼育、毛刈り、羊毛紡ぎ、毛織物、羊肉の輸入や加工、羊や地域の歴史、産業革命、環境問題などさまざまな分野に学びは展開します。農業は、食、人の生き方、経済社会のあり方、自然・環境問題など、世の中の縮図であり、学びの要素が豊富な生業です。

 なお、これからも学校法人・小学校設立認可という学事課の手続き・審査、私学審議会の審議のために入学児童の確保、教育課程の整備、スタッフの実践研修など、多様な取り組みが必要です。とりわけ学校運営資金の積み上げは、認可に必要な初年度学校運営資金の約6000万円を最低限確保したところで、これからの校舎整備・活動充実のためにはまだまだ十分とはいえない喫緊の課題です。どうか六華同窓会の皆様にも、新たな小学校に応援をいただけると幸いです。ご寄付は郵貯口座、加入者名:北海道に「自由な小学校」をつくる会、口座番号:02760-7-103252にお願いします。

 活動は随時HPhttps://manabinosato.studio.site)やSNS(facebook,twitter,note,instagram,radiotalk)、Youtubeチャンネル等で発信しておりますので、ぜひご覧いただければと思います。


細田孝哉(ほそだ たかや)

札南30期 北海道大学教育学部卒 札幌市中学校教員12年(3校)、北海道札幌清田高校教員18年(北海道教育大学大学院修了、グローバルコース長として国際理解教育を推進)、特別支援学校教員7年、2022年4月から旧北長沼小学校校舎でまおい学びのさと小学校開校準備

特定非営利活動法人まおい学びのさと 代表理事