六華だより

コロナ禍で実施された、風月の医療従事者への無償提供と六華の繋がり

第97号

石田(旧姓 正重)香名子(南42期)

 ご縁があり、皆さんご存知の風月さんが、緊急事態宣言下で実施した医療従事者等へのお好み焼き無償提供についてお伝えします。道内では報道されていますが、道外や海外にお住いの方、Facebookのアカウントをお持ちでない方はご存じないかもしれません。しばしお付き合いいただけますと幸いです。

偶然が重なった風月との繋がり

 風月との繋がりは、2017年の幹事期を南42期が務めたことがきっかけでした。私は実行委員会の広報編集部として会誌作成に携わることになり、創業50周年を迎えた風月特集を組むことになりました。偶然にも、私が当時在学中のビジネススクールの2期上の修了生に、風月統括マネージャーの二神ひかりさんがいて、その繋がりで二神敏郎社長への3時間に及ぶインタビューが実現しました。そこで、社長の熱量と六華への愛に圧倒され、何度も録音した音声を聞いているうちに、社長のお人柄はもちろん、企業としての風月ファンになりました。

偶然目にした、「会社の前で焼き立て販売中」

 時は流れ、2020年4月18日のこと。全国的に緊急事態宣言が出され、1週間だけ学校に通い、子供たちは再び休校となりました。皆が先の見えない状況と自粛にストレスを溜め、私もテレワークになり、日々の食事が悩みでした。何気にスマホでFacebookを開くと、ひかりさん個人の投稿が目に飛び込んできました。~会社の前で焼き立て販売中~。たまたま自宅が本社に近く、投稿を見て一目散に豊平区の風月本社に向かいました。

 公に告知しなかったにもかかわらず、2~3人が常に並ぶ状態で、その場で社長とひかりさんにお会い出来ました。世間話が終わり、社長がふと、「お好み焼きを病院や高齢者・児童養護施設などにお届けすることを考えている」と仰いました。社長が考えていたのは無償提供のことだったのに、私はこの時点で、『焼き立ての病院向けデリバリー販売』を始めると思い込み、風月も休業で大変なようだと、ご近所のママ友グループLINEに焼き立て販売とデリバリー情報を流しました。ある医療従事者の方が、「自分の勤める病院では、上の人(決定権のある層)に話を持っていくのが難しいから無理」「外部から持ち込みが制限されているところが多い」と医療現場の状況を教えてくれました。

 また、その日のうちに、Facebookの六華応援ひろばへの投稿を考えました。店舗も休業中で公式サイトでの宣伝も控えたままの風月さんの取り組みを、状況を知った者として少しでも広くお知らせしなくては!という使命感がありました。風月の宣伝行為と勘違いされないよう細心の注意を払ったつもりで、このご時世に…との批判を覚悟で投稿しました。許可を取り、社長の画像を投稿したためか、意外にも200件以上の『いいね!』がつきました。

 2回目の投稿は4月21日で、ひかりさん個人のFacebookのシェアでした。内容は医療機関等への無償提供に関するものでした。六華応援ひろばであれば、医療機関で決定権を持つ層に直接リーチするかも、と考えたからです。

 4月23、24日の両日、風月の取り組みが道内民放や地元紙で紹介されました。翌日25日に本社に買いに行くと、報道で取り組みを知った方々が行列を作っていました。前職で広報を担当していたのですが、改めてメディアの拡散力はスゴイと思いました。後日談ですが、この時点でFacebookの投稿、報道等の反響でひかりさん個人にメッセージが殺到し、パンク状態に陥ったそうです。

 その後、六華応援ひろばには風月に関する投稿が次々と寄せられ、いつからか六華のタオルが掲げられ、あの時意を決して投稿して良かったと思うようになりました。期間中は週1ペースで通い、会うたびに社長とひかりさんから、「支援が広がったのは六華のおかげだ」と、何度も感謝を述べられました。5月16日にお好み焼きと一緒に入っていた『風月から皆さまへ』を読み、札幌でも起きていた事実に泣けてきたのは、言うまでもありません。

「風月ホームページお知らせ欄 《2020年5月16日 風月からみなさまへ》」

https://www.fugetsu-sapporo.co.jp/archives/515

本社前の販売ブースに掲げられた六華「堅忍不抜・自主自律」タオルの前の二神社長 (5月4日 35期小町裕之さん撮影)
医療機関や施設に届けられたお好み焼きのセット(牛乳はサツラクさん提供)

動きを加速させた、六華の繋がり

 ここからは後日談。医療従事者への提供を行いたいと言い出したのは社長で、ひかりさんは自分たちも苦しい状況だと、最初は反対したそうです。しかし、仕入れたキャベツが1t(通常営業であれば、2~3日分の在庫)あること。風月のために麵やソースなどを製造しているメーカーの供給を止めたくないという思い。そして、コロナ禍でお好み焼きを食べて、元気になってもらうことが風月の使命だと無償提供を実施し、多くの人が賛同しました。

 当初は比較的規模の小さなクリニックや児童デイサービスを中心に実施していました。が、札幌市の副市長や北海道新聞社に、持ち込みの許可が下りそうな医療機関を相談したことで一気に潮目が変わり、そこに六華の繋がりが加わってさらに動きが加速したそうです。無償提供は4月19日から5月20日の約1か月実施され、提供した施設・機関は51施設(行政含む)、約7千食になりました。

 社長とひかりさんが手分けして訪問した医療機関の多くに六華の同窓生が在籍し、出迎えてくれたり、声をかけてくれることが多かったそうです。中には、「○○病院の□□さんは、南△期の同期だよ。」と教えてくださることもあり、最初から六華に声を掛けていれば早かったかもしれないと思ったそうです。今思えば、私がデリバリー販売と勘違いしたのが痛いところです…。

 現在は、徐々に客足も戻りつつあり、7月20日まで実施されていた『札幌市飲食店未来応援クラウドファンディング』では六華関係者からの申し込みも多く、チケットを利用される方、提供を受けた医療従事者の方の来店が増えているとのことでした。

 「後悔するとしたら、私が南高に入れなかったことです。」ひかりさんが笑いながら冗談交じりに言いました。しかしながら、ひかりさんとの2時間ほどの会話(半分は雑談)から、あの、幹事期に初めて二神社長にインタビューした際、私を魅了したのと同じ熱量が、しっかりと引き継がれているのを感じました。

 最後に、医療従事者の皆様を始め、対応に当たられた関係者の皆様には、一市民として深く感謝申し上げます。新しい生活様式の下、六華の繋がりでワイワイと鉄板を囲むことのできる状況が来る日を切に願います。

お客様から寄せられた医療従事者の方々宛ての応援メッセージのボード。お好み焼と共に医療機関へお届け

石田(旧姓 正重)香名子 プロフィール 

札幌市立八条中、札幌南高、小樽商科大学を経て1997年から2015年まで (株)東急ハンズに勤務。同年から2年間、小樽商科大学大学院(ビジネススクール)に通い17年、MBA(経営管理修士)を取得。現在は大学院同期が起業したマーケティング会社に勤務。2児の母。
札南在学時は12クラスあり、1年次は112(1年12組)で伝説?のプレハブ校舎を経験。