六華だより

日本酒と日本文化の魅力を世界へ – 2025 Miss SAKE Japan 館農知里

第108号

館農 知里(南70期)

 「2025 Miss SAKE Japanは…、北海道代表 館農知里!」——広い会場を埋め尽くす観客を前に、マイクで自分の名前が呼ばれた瞬間、自分の人生に一つの覚悟が生まれました。それは、自らの足で「日本酒と日本文化を世界へ広める」という強い決意でした。

「世界と繋がりたい」という原点

 札幌南高校在学中は、個性豊かな仲間達に囲まれ、たくさんの学びを得ました。高校二年生の時には、インドネシア教育支援ボランティアに自主参加し、そこから校内のボランティア同好会で発展途上国への文房具集めプロジェクトを企画しました。そんな経験から、「世界と繋がり、人の役に立つ活動をすること」を将来の自分軸として進路を選択しました。

インドネシア教育支援ボランティアで出会った子ども達

校内での文房具集めプロジェクト

 2020年4月、早稲田大学政治経済学部に入学しました。政治・経済・社会・民族・紛争…、興味・関心がある分野の勉強に没頭し、また長期休暇を利用して、地方創生ワークショップに参加したり、友人達とビジネスコンテストに出場したり、NPO法人で学生インターンをしたり、一人でレンタカーを借りて四国八十八か所お遍路をしたり…と、挑戦の積み重ねで充実した日々を過ごしました。そんな折に、「早期卒業」の声がかかりました。当時、国際政治系ゼミでサブサハラ・アフリカ地域の教育政策について研究していました。目標とする国際協力分野について深く知れば知るほど、「自分の手の届く支援には限界がある」ことを痛感しました。同時に、一分野では解決できない複雑さを目の当たりにして、新たな視座や行動軸を広げる必要性を強く感じました。早期卒業は、「今の自分に何ができるのか?」という漠然とした問いに向き合う絶好の機会だと考え、大学を一年早く卒業し、浮いた一年分の学費と時間を資本に、バックパッカーとして世界一周することを決意しました。

課外活動で出会った仲間

中村英俊ゼミでの卒業

世界一周で出会った「日本文化を愛する人々」

 世界一周では、半年間で32カ国を訪れました。出発直前に何か出来ることはないかと考え、学生時代から取り組んでいた茶道・着物・書道の道具を、計20㎏を超えるバックパックに詰め込みました。旅路でSNSを通じてアポイントを取りながら、8つの教育機関/200名以上の学生を対象に日本文化体験イベントを開催しました。そのような活動を通じ、アニメや漫画だけではなく、日本の伝統文化が世界中で愛されていることに驚きました。インド・デリー大学では抹茶を毎日点てて飲んでいるという学生が、東欧の国ブルガリア・ソフィア大学では琴・尺八の部活動が、ポーランドでは島唄の大会に向けた特訓が、タンザニアではヨサコイや日本舞踊を披露し合う日本愛好家サークルが…。世界各地で、日本語や日本文化を熱心に学ぶ人々の姿を目の当たりにしました。彼らは、日本の伝統文化に根付く日本人の「精神性(こころ)」や「美学」に深く共感し、人生の指針としているようでした。ルーマニアでは、日本人の「空気を読む」文化について教えて欲しいと熱心に尋ねられたこともありました。どんなに日本とは異なる国民性を持つ国でも、日本文化を愛する人は日本人らしい謙虚さや奥ゆかしさをまとっていました。その姿に触れた時、私達日本人がどれだけ自国文化に根付く本質と向き合っていないかに衝撃を受けました。そして、より多くの人々に日本文化の魅力と価値を届けていきたいと心に決めました。

インド・デリー大学での野点

ベトナム・日本語学校での書道
タイ・泰日工業大学での着付

「日本酒」が導いた新たな挑戦

 私が日本文化の中でも特に愛するものの一つが「日本酒」です。日本酒は、四季折々の自然、古くから続く歴史、伝統的な職人技が織りなす「日本文化の結晶」です。大学卒業後、すぐに日本酒ソムリエ「唎酒師」の資格を取得しました。さらに帰国後は、酒蔵での店舗開発・販売、そして日本酒コンクール正規審査員などに挑戦しました。そんな折に、Miss SAKEの存在を知りました。日本酒、そして日本文化を世界へ広めるアンバサダーとして活躍したいと直感し、すぐに応募に踏み切りました。オーディションを通過し、2025年3月、2025 Miss SAKE 北海道に就任しました。その後、最終選考会までの約3か月間は、毎週土日・朝から晩まで日本酒と日本文化についての猛特訓を受ける「ナデシコプログラム」がありました。日本酒や発酵などの「食文化」、着付けや和髪、日本舞踊、和紙、江戸切子、巫女舞などの「伝統文化」、そして投資や英会話などの「実践教養」まで、幅広い分野の講座を通じて、大和撫子としての素養を磨きました。各プログラム受講後は、3日以内に全講義のレポートを提出しなければなりません。日本文化への愛着、アンバサダーとしての覚悟、そして最後までやり抜く忍耐力を試された、厳しくも充実した3か月間でした。気づけば、Miss SAKEとしての自覚と責任が生まれていました。そしてその間、札幌南高校41期の母・館農幸恵がFacebook「六華応援ひろば」に私のMiss SAKEへの挑戦を投稿したことをきっかけに、多くの六華同窓生の方々から温かいご声援をいただきました。この場をお借りして、皆様に改めて厚く御礼申し上げます。

2025 Miss SAKE 最終選考会の様子

日本文化を世界へ届ける「架け橋」として

 2025年6月、2025 Miss SAKE 最終選考会が京都で開催されました。日本酒への熱い想いを胸に臨む2分間の「スピーチ発表」と、選ばれたベスト8による即興での「質疑応答」。凛とした空気の中、自分自身の歩みと日本文化への想いをあらためて心に刻む瞬間でした。多くの観客の方々に見守られながら、冒頭の通り、2025 Miss SAKE Japanに就任しました。就任以降は、酒蔵や日本酒関係者の皆さまと直接対話しながら、日本酒イベントや試飲会、企業主催のセミナー、海外向けの文化発信などに携わってきました。また、日本酒以外でも、小学校での甘酒作りワークショップ、酒米農家での田植え・稲刈り、米コンクール審査員、十二単着装モデルなど、日本が誇る<Made in Japan>の普及活動にも取り組んできました。特に、昨年2025年は大阪・関西万博が開催され、各国パビリオンでの鏡開きや文化発信の機会も多くいただきました。私達は、着付け・ヘアメイクは基本的に全て自分で行います。仕事当日は、準備と移動のため、深夜1時半に起きることも…。体力的/精神的に辛い瞬間もありますが、それを大きく上回る使命感や達成感を原動力に日々活動に励んでいます。2026年は、フィリピンでの大使館主催天皇誕生日レセプション、アゼルバイジャンでの国際文化・産業博覧会など、世界複数カ国を舞台に日本酒・日本文化を広めていく予定です。これまでに日本国内で開催された複数のイベントでは、多くの札幌南高校OB/OGの方々にお声がけいただきました。皆様の応援が、活動を続ける上での大きな励みとなっています。

 引き続き、温かい応援をいただけましたら嬉しいです。今後もMiss SAKEとして、そして一人の日本人として、日本文化の美しさを世界へ広げるとともに、次世代へとその価値を継承する「架け橋」となることを目指してまいります。

大阪・関西万博での鏡開き
北海道ブースで鈴木道知事とともに
和酒の祭典「和酒フェス

館農知里(たての ちさと)

2001年、北海道札幌市出身。
早稲田大学政治経済学部を早期卒業後、世界32カ国を訪問し日本文化体験イベントを自主開催。日本文化の価値を世界に発信すべく、一般社団法人Lien Cultureを設立。
主たる事業は、高校生向け国際交流プログラム「REC PROGRAM」。2025年6月、応募総数1000名以上の中から選ばれ、2025 Miss SAKE Japanグランプリに就任。