六華だより

世界がすぐそこに ―北海道から世界とつながる毎日―

第93号

世界がすぐそこに ―北海道から世界とつながる毎日―

山田瑞希(南56期)

今どこ?日本にいる?

 高校時代の友人から送られてくるメッセージの大半は、私が今どの国にいるのか、という問いかけから始まります。実際、ほぼ毎月タイや台湾にいる生活を送っています。「海外を飛び回っている」というとカッコよく聞こえますが、どちらかというと毎日必死に汗をかきながら走り回っているのが現実です。今回このような貴重な機会を頂きましたので、北海道に居ながら世界がグッと近くなっている私の日々を紹介させてください。

 私は、3年前からウェブディレクションを行う株式会社Gear8に所属し、アカウントプランナーとして働いています。役割を簡単にいうと、「企業のウェブサイトを作る会社に所属していて、企業の宣伝や戦略を提案するひと」という感じでしょうか。デザイナーやエンジニアという手に職のある人材が必要なウェブ会社にいるので、時々「山田さんもデザインするのですか?」と聞かれます。残念ながら私にはそのような技術はありませんので、主な業務はウェブに関する提案・営業・ディレクションです。さらに、それに加え会社のもう一つの軸となっている「メディア運営」を主に担当しています。

外国人の目線で伝える、とは?

 北海道を訪れる外国人観光客は年々増えており、札幌の中心部でも外国人を見かけない日は無いと言えるくらいになりました。ひと口に外国人観光客と言っても、「団体でバスから降りてくる中華圏の旅行者」というイメージだった一昔前とは今は違い、「郊外のゲストハウスに長期滞在する欧米人」や、「レンタカーを使って秘境を巡っている東南アジアのカップル」など、北海道旅行の楽しみ方も国や世代を越え広がってきています。

 現在、私が携わっている「Trippino HOKKAIDO」(紹介サイト:https://trippino-hokkaido.com/inbound/)は、「北海道に来る外国人観光客のための情報発信メディア」です。運営開始から4年が過ぎ、おかげさまで道内の企業や自治体様からも信頼をいただけるメディアになりました。メディアの内容は、

1.ダウンロードすると、北海道の観光スポット情報を入手できるアプリ
2.今日の北海道の様子やニューオープンのお店情報を知ることができるSNS
3.旅行初心者の気になることを解決するブログ

と、複数のサービスを使い分けて、北海道旅行を楽しむ外国人に情報を発信しています

タイ人スタッフと「TrippinoHOKKAIDO」イベントをバンコクで開催

 タイ人、台湾人の社員と共に日々コンテンツを作っています。彼らと話していて一番指摘されるのは、「それ北海道の片想いだよ」というポイント。北海道生まれ北海道育ちの私にとっては「絶対におすすめ!」と思うことも、外国人の求めている北海道とはちょっとズレていることが多いのが現実です。ずっと北海道にいると、ついつい外部の視点から見つめて伝えることを忘れてしまいます。知りたいことと伝えたいことが噛み合わないまま言語を翻訳しても、ほとんど意味がないこともわかってきました。なので、日本人の作った説明文を翻訳するのではなく、なるべく外国人スタッフの意見や表現を優先し、「外国人の目線で見る北海道」を伝えるようにしています。私自身、バンコクに約1年ほど住んでから北海道に帰ってきた時、一番の魅力は美味しい海鮮でも観光施設でもなく、思い切り深呼吸できる空気だと感じました。それは、北海道にいるだけでは気づくことのなかった魅力でした。

鶴居村の魅力を発信するため、取材中の様子

 北海道に住んでいる・北海道に住んでいたことのある外国人社員とともにメディアを運営するようになって、自分の中には「世界と繋がって仕事をするには、日本を飛び出さないと意味がない。」という固定観念があったことに気づきました。現在、先輩・後輩が外国人という環境で働き、会議もオンライン通話で国境を越えて行っています。世界とつながる方法は、たくさんあります。拠点は札幌にあるのですが、毎日違う国の文化に触れ、外国で働いているような刺激をもらっています。

 先日、タイのテレビ局が、北海道を舞台に旅行番組を撮影するために来道しました。北海道好きなタイ人の中で人気なメディアのスタッフの一員として、道内ロケの準備を手伝い撮影に同行するなど、アテンド業務を行いました。これも、海外に移住し、日系企業で働くだけではなかなか得られない、まさに拠点が北海道だからこそいただいたチャンスでした。

 撮影スタッフと話していると、思わぬ質問や着眼点にハッとさせられます。「道路に設置してある工事現場を囲うコーンが動物型など可愛いのはなんで?」「北海道の観光地に伝わる伝説はドラマになってないの?」「野菜が美味しいのはなんで?」と、やはり日本人には無い角度で、北海道に興味を持ってくれています。今はインターネットで知りたいことはなんでも知ることができる時代、見てみたい風景も簡単に画像検索ができます。そんな時代だからこそ、実際に北海道に来た外国人が疑問に思ったことを、直接彼らから聞くことの重要性を感じました。

タイテレビ番組制作スタッフと美瑛にて

北海道から世界に発信するために、一度外から見つめる。

 上記のような「外国人観光客向け情報発信の業務」だけではなく、主に「東南アジア現地で日本企業の商品販売に関するサポート」も行っています。多い時には毎月タイや台湾で北海道PRを行います。移動や出張は大変ですが、やはり現地に行かないと得られない感覚や情報があると思っています。

タイ・バンコクのジャパンエキスポにて北海道旅行の接客対応中の様子

 最近は、嬉しいことに「海外とのビジネスに興味があって・・・。」と相談に来られる学生さんがいらっしゃいます。大それたことは言えませんが、彼らには、「外国とのビジネスに興味がある人は、LCCやインターネットのおかげで旅行が身近になった今、どんどん気軽に北海道を出ていろんな国を体験して帰ってきてみては?」と提案しています。

 北海道から直行便が出ている地域も増えているので、色々な国に出かけ、異文化で生きている人々と出会うのが良いと伝えています。そのような経験を通して、改めて自分の故郷や国を知ることができると思うからです。その結果、世界には多様な働き方があることを理解して、「北海道という好きな場所にいながら、世界と仕事をする」方法も取り入れて、自分好みの働き方が創れるのかもしれないと感じてもらえたら嬉しいです。
自分にとっては、前例がないことばかりで全てが挑戦の日々ですが、これからも北海道と世界を行き来しながら今後も頑張りたいと思います。 

 

山田瑞希プロフィール

1987年札幌生まれ。
大学在学中のラジオパーソナリティとしての活動を通じて、プロモーション・広報の仕事に興味を持つ。卒業後札幌の広告代理店に勤務。インバウンド事業部にて主に訪日外国人観光客向けのプロモーションセールスを担当。タイでの生活経験を活かし、主に東南アジア向けウェブマーケティング・外国人向けメディアの運営や企業・自治体へのアカウントプランナーとして活動している。(株式会社Gear8)