六華だより

相続登記の義務化について

第105号

佐藤 純通(南16期)

 職業上の有益情報でも会報へ寄稿して欲しいとのご依頼がありましたので、我々団塊世代には、相続は、ご自身の問題としても、また、子供たち相続人にとっても,人生で必ず生じる身近な問題でもありますので、最近の重要な法改正の一つとして、本年、令和6年4月1日から、土地・建物の不動産を相続されたときには、相続による所有権の移転の登記をすることが法律上の義務とされ、違反者には、行政罰も科せられるようになりましたので、ご案内致します。
 不動産登記簿などの所有者が直ちに判明しない、または判明しても所有者に連絡がつかないという土地は、従前から、当たり前にありましたが、東日本大震災後の復興事業で用地買収が進まない大きな阻害要因ともなり、所有者不明の土地が,国内全体では九州の面積相当の広い面積があり、このまま放置すれば、北海道の面積に匹敵する面積にまで広がると見込む危機的状況が判明し、社会問題として顕在化しておりました。

 所有者不明土地になる大きな原因は、「相続」が発生しても、宅地とは異なり、農地や山林、原野等の売却や賃貸ができない経済的に価値がない土地は、固定資産税や管理費の負担がかかるため、権利承継したくないと考える人が増えて、相続人が相続を回避して、登記をしないで放置することから生じることが多いということがありました。

 そこで、政府は、相続登記を義務化するために、不動産登記法を改正し、令和6年4月1日から、土地や建物について、相続を知った日から3年以内に、相続登記をするよう義務づけることになりました。そして、正当な理由が無く、相続登記の申請をしなければ、10万円以下の過料(行政罰)を科すという罰則も規定されました。
 これは、過去の相続についても適用されます。法施行日の令和6年4月1日から3年以内の令和9年3月31日までに、相続登記しなければならないと義務化されておりますので、ご自身の先祖の土地、建物について登記をせずに放置しているものにも適用されますので、そのような土地等がある方は、要注意であります。
 ただし、義務化により、急に罰則を科せられるわけではなく、法務局から事前に催告をし、それでも正当事由が無く登記を行なわないときに、はじめて裁判所に「過料通知」をするという運用方針が示されております。
 また、他の相続人らの協力を得られないため、遺産分割協議も出来ないという場合もありますので、そのような場合には、自分だけでも可能な「相続人申告登記」制度が新設されましたので、それを行なえば,罰則の適用を回避することは可能になります。
 また、ご自信が亡くなった後に相続人ら家族で争いを生じる「争族」を回避するために,生前に遺産承継の「遺言」を作成されておくことは、非常に有用なことでありますので、身近な法律家である司法書士にご相談されて対策をされることも真剣に考える必要もあるかもしれません。

 今後は、相続登記は必須になりますので、六華卒業生の司法書士も大勢おりますので、是非ご相談されて下さい。

佐藤 純通(さとう じゅんつう)

1947年 北海道札幌市生まれ
日本司法書士会連合会名誉会長、司法書士法人横浜中央法務事務所所長。中央大学法学部を卒業後、1981年に司法書士登録。神奈川県司法書士会会長、日本司法書士会連合会副会長を経て、2007年~09年に同連合会会長を務めた。