六華だより

「帰る場所」 合唱部の活動について

第104号

印部 陽一(合唱部顧問)

 札幌南高合唱部の活動について、顧問の印部が紹介します。私が南高に赴任した令和3年度はコロナ真っ只中であり、歌をうたうこと自体はばかられるような状況でした。そんな中でも部員数は決して多くはありませんが南高合唱部は歌う機会を大切にしてきました。

 令和5年度の活動を春から振り返ってみます。

4月 新歓ミニコンサート
6月 高文連、コーラスフェスティバル
7月 南高祭
8月 NHKコンクール
9月 全日本合唱コンクール
10月 秋の市民合唱祭
12月 東西南北音楽部合同音楽祭、クリスマスコンサート、クリスマスツリー点灯式(南高)
3月 第10回定期演奏会

 1年を通して何かしらのステージがあり、日々練習に励んでいますが、この数年間は新型コロナウイルスの影響が本当に大きいものでした。

 令和2年度には、南高祭をはじめとして学校行事はことごとく中止になりました。歌うことが害悪のように見られ、肩身の狭い思いをした合唱部員も多かったことと思います。この3年間で最もつらかったのは定期演奏会の延期とコンクールの辞退でした。

 令和3年度第8回定期演奏会当日の朝に発熱者が出てしまいました。3月末に予定していた演奏会は中止とせず、年度をまたいで5月に延期しました。延期した演奏会にも多くの卒業生がかけつけてくれましたが、この定期演奏会をもって本州の大学に進学することになっていた3年生は現役生として最後の定期演奏会に参加できないままでした。

 令和4年度夏に行われたNHK全国学校音楽コンクール前日にも発熱者が出てしまいました。NHKに問い合わせたところ、発熱者がステージに立つのは無理ですが、残りのメンバーでの参加は可能ということでした。私たちは話し合い、全員で参加しないと意味が無いということも意見として出ましたが、最終的には「フリー参加」という審査対象にならない形態で課題曲のみを歌うということにしました。

 このようなつらい状況の中でも合唱部の生徒たちは歌うことを大切にし、そして音楽を楽しむことを忘れませんでした。令和5年度5月に新型コロウイルスが5類に移行しました。それまで練習の際には必ずマスクを着用してきましたが、そのような縛りはなくなりました。素顔を見て笑いながら歌える喜びは何ものにも代えられません。

 夏の大きな目標は二つのコンクールです。一つ目は前述した8月上旬に行われるNコン、そしてもうひとつは9月中旬に行われる全日本合唱コンクールです。春に新入生を迎え、高文連やコーラスフェスティバルなどのステージを経験し、全員で目標に向かって練習を積み重ねます。札幌南高では3つまでクラブを兼部することができ、多くの合唱部員も他の部活動にも所属しています。軽音楽部の生徒が多い時期もありましたが、現在は生徒会執行委員を兼ねる生徒が多く、学校行事の運営に関わっています。南高祭の時期とコンクールの練習が佳境に入る時期が重なってくるので本当に多忙な毎日となります。コンクールの結果はどうあれ、ひとつの目標に向かって努力を続け、とても充実した日々になります。

 合唱部として、南高で行われる学校行事にも積極的に関わっています。

 コロナ禍では入学式や卒業式で校歌を歌うことができずにいました。しかし今年度の入学式や、中学生に向けたスクールガイダンスでは合唱部が校歌を披露しました。

 合唱部としての活動ではありませんが高体連壮行会では全校生徒で校歌を合唱し、学校祭も制限を設けずに実施することができました。まだ完全ではありませんが学校生活も以前の活気が戻ってきています。
 南高祭の「ストリートパフォーマンス」では生徒ホールで5曲を歌いました。多くの来場者の方々に楽しんでいただくことができました。
 令和5年度新しい試みとして始まった「季節イベント」にも合唱部として関わりました。秋の球技大会後に行事があまり行われないことを受け、生徒会長が公約に掲げ実現させたものです。普段あまり発表の機会が無い有志の生徒たちが放課後に生徒ホールでパフォーマンスを繰り広げます。季節イベントの一環として「クリスマスツリー点灯式」が行われました。これはクリスマスの時期に、クリスマスツリーや願い事を書いた短冊が生徒ホールに飾られます。今年は12月19日(火)に点灯式がウルトラマンヘッドの下(生徒玄関前)で行われました。合唱部がクリスマスソングを披露し、その後サンタに扮した校長先生がカウントダウンと共にツリーに点灯します。寒い中でしたがとても素敵なひとときになりました。

クリスマスツリー点灯式(南高)

 コンクールシーズン後、秋から冬にかけて合唱部として学校外で歌うステージが続きます。10月には卒業生との合同合唱団「Southern Seagulls」として秋の市民合唱祭に参加しました(写真)。高校生と、南高合唱部出身の大学生や社会人による合同合唱団です。今年の市民合唱祭は札幌コンサートホールKitaraで開催されました。世界屈指とも言われる音楽ホールで「うたをうたうのはわすれても」という曲を現在北大合唱団に所属している卒業生に指揮を振ってもらい、顧問も歌に加わり演奏しました。今年度は2年生の見学旅行と日程が重なってしまったため、現役生は1年生のみ参加となりました(3年生は既に引退)。2年生はとても残念がっていました。この曲は3月に行われる定期演奏会でも演奏予定で、2年生は定期演奏会でリベンジです。ちなみにSeagullというのは「かもめ」のことで、定期演奏会で毎年大切にアンコール曲として歌っている「鷗」にちなんだ名称です。Southern Seagulls=南のかもめたちといったところでしょうか。

秋の市民合唱祭にて卒業生と
(コンサートホールKitara)

 「東西南北音楽部合同音楽祭」は第5回を迎え、今年度は12月10日(日)にちえりあで開催されました。各学校の吹奏楽部、オーケストラ部、そして合唱部が集い、演奏を行います。第1回の音楽祭以来実施できていなかった合同合唱を復活させました。札幌南高記念館に各学校の合唱部員が集まって交流、練習を行い、当日はアカペラで2曲を演奏しました。

 12月には毎年生徒たちが楽しみにしているクリスマスコンサートを実施しています。以前は南高記念館で開催していたようですが、ここ数年は札幌時計台で実施しています。札幌時計台の2階に、あまり大きくはないのですが小さなコンサートを開催できるホールがあるのはご存じでしょうか。クリスマスにふさわしい雰囲気の中、多くのお客様にご来場いただき、クリスマスにちなんだ曲を中心に演奏しました。

 一年間の大きな目標である定期演奏会を今年度は3月25日(月)にルーテルホールで開催します。定期演奏会は、卒業生が帰って来ることができる場所としてとても大切にしています。普段は高校生15人程度で活動していますが、定期演奏会には多くの卒業生が歌い手として参加してくれます。最終ステージは卒業生との合同ステージとなり、普段はなかなかかなわない大人数での合唱となります。
 ここ数年毎年定期演奏会で歌い続けている曲で「五線譜のたびびと」という曲があります。この曲は札幌南高合唱68期卒業の丹羽さんが作曲し、68期の生徒たちが作詞しています。

私はうたう
たくさんの心が震えて
ぶつかって くずれそうになっても
また
ひとつのうたになるかぎり
私はうたう
裸のままの心の声で
堂々と喜びを「喜び」とうたう
私はうたう
私が私でいられるところ
ずっと そのままで

 音域も広く難易度の高い曲ですが、この曲を歌いに帰ってくる卒業生もおり、旧交を温めています。

 南高合唱部を卒業した多くの生徒たちが大学でも合唱を続けています。そして大学で合唱団に入っていなくても年に1度定期演奏会で歌いにやってきます。とても素敵なことだと思っています。

合唱部パーカーを着て