六華だより

挑戦の意義

第102号

井澤 駿介(南68期)

 六華のみなさま、68 期の井澤駿介と申します。
 高校卒業後、1 年の浪人を経て東京大学に入学し、そして野球部での活動も 4 年が経ちました。4 年間は勉学、そして部活動において刺激的な毎日でしたが、この一年はさらに顕著であり、転機の一年ともなりました。

 東京大学野球部は六大学野球という学生最高峰のリーグに所属しており、実力で圧倒する他大学を倒そうと日々切磋琢磨しています。2 年生の頃から試合に出場していますが、10 試合に 1 回勝つかどうかくらいの弱小チームであり、何十年も連続で最下位というのが現状です。そのような高いレベルの環境に身を置き、チームでエースを務めさせていただき、何度か勝つこともできました。負けて当たり前のチームが勝つ喜び、達成感は味わったことのないもので、何事にも変え難いものでした。元々野球は大学までと考えて入学したのですが、試合を重ねるにつれて、自分のレベルも上がるにつれて、さらに上のレベルで野球をしたいと考えるようになりました。

 6 月頃にプロ志望を表明してからはさまざまな意見、応援をいただきました。誇れるような成績もなく、弱小チームのエース、そんな凡人には到底無理だというのが正直なところだったと思います。それでも自分が密かに目指してきた可能性にかけたい、後悔したくないという思いが勝り、公にすることにしました。自信、そのようなものは全くありませんでしたが、公にすることによって開き直ることができたのかなと思います。

 指名があれば東大としては4年ぶり、札幌南からだと 15 年ぶりでしたが、結果としてドラフトは指名がなくプロになることはありませんでした。しかし、このドラフトが進路を変えるきっかけともなりました。元々、大学院に進む予定でしたが、社会人野球から連絡をいただき野球を続けられることになりました。東大から社会人野球、そのような人は少なく、異色とはなりますが、このまま終わりたくない、諦めたくない気持ちからこの決断となりました。進む予定の NTT ⻄日本は強豪チームであり、厳しさも増しますがより一層精進したいと思います。

 人間誰しも子供の頃は夢があり、純粋に追いかけますが、歳をとるにつれ現実をより意識し、いつしか挑戦をやめてしまう人が多いように感じます。僕自身も子供の頃はプロ野球選手になることが夢だと語っていましたが、いつしか言えなくなっている自分がいました。挑戦もせずに諦めてもいいのか、困難を乗り越えた先に幸福があるのではないか、僕はそう思い、口に出すことができました。夢を夢で終わらせるのは簡単です。失敗をすることは恥ずかしいことかもしれません。多少のリスクがあるかもしれません。ただ僕は失敗の先にしか成功はない、だからこそ挑戦し続けなければならないと思っています。

 ドラフトに際して、六華とのさまざまなつながりを感じることが多くありました。野球部はもちろん、それ以外の方からも多くの連絡や応援をいただく機会があり、人の温かみだけだなく、世代を超えた一体感のようなものも感じられました。思えば、高校の時から多くのOB の支援があって勉学、部活動に励むことができ、大学や社会人の進路に関してもアドバイスをいただき、改めてこの札幌南という学校の応援する力、その影響の大きさを感じずにはいられませんでした。改めて感謝申し上げます。

 またこれまでは自分がアドバイスを受け、応援をしていただき、何かをしてもらうばかりでしたが、これからは何かをしてあげる方にもなりたいなと考えております。何をできるかは分かりませんが、どのような形であれ、何か還元できる側になれればと思います。

 挑戦の意義、それを一言で表すことは難しいですが、人生において、自己実現においてとても重要な意味を持つのではないかと思います。目指すところはそれぞれですが、この文章が一人でも多くの人の挑戦の刺激、後押しとなれば幸いです。

井澤 駿介(いざわ しゅんすけ)

2000年1月6日生まれ。
札幌南、1年の浪人を経て2019年に東京大学に進学。大学では運動会硬式野球部に所属。