六華だより

書道部の道

第102号

大塚 亜美(札幌南高校2年) 

 札幌南高校書道部2年、部長の大塚亜美と申します。

 札幌南高校書道部は昭和30年に設立されました。現在、顧問の水間猛猪先生、副顧問の菊地圭子先生のもと、2年生5名、1年生8名で活動しております。書道展への出品や校内での作品展示、さらに13年前から始めた書道パフォーマンスにも力をいれております。札幌駅前地下歩行空間で年末に行われる書道パフォーマンスは恒例行事となりました。

 2022年度は第31回YOSAKOIソーラン祭り、札幌市制100周年記念式典、特別展金子みすゞの世界、チ・カ・ホのお正月、そして札幌青年会議所新年交流会の五ヶ所でパフォーマンスをさせていただきました。たくさんの貴重な経験をさせていただき、部員一同たいへん感謝しております。

 7月31日に開催された札幌市制100周年記念式典「NEXT 100YEARS KICK OFF FES.」は、数千人の観客、タカアンドトシや錦鯉などの様々なゲストが招かれた大きなイベントでした。この式典で、札南書道部は札幌旭丘高校合唱部と共に、グランドフィナーレのトリを飾りました。GReeeeNの楽曲「始まりの唄」の合唱に合わせて書き上げたのは、縦4メートル、横7メートルの巨大な作品です。札幌の明るい未来を願い、歌詞に「輝け」という言葉を添えて揮毫しました。2023年3月中旬まで市役所ロビーに展示していただける予定です。

 札南書道部の主力は2年生です。しかし、今の2年生が1年生の時、新型コロナウイルスの影響で、書道パフォーマンスは一度しかありませんでした。圧倒的に経験不足でしたが、次の1年生を引っ張り、育てていくのは2年生しかいません。一度の経験を頼りに、私たちのスタイルを試行錯誤しました。

 理想としたのは、人の目を惹きつけ、魅せる書道であり、魅せるパフォーマンスでした。部員が楽しいだけの自己満足のパフォーマンスは、パフォーマンスとは言えません。

 道外には「書道パフォーマンス甲子園」という大会があります。理想へのヒントを探すためにYouTubeでいくつか見てみました。数多の高校生が、華やかな衣装と優雅な演技をしながら書く姿に圧倒されましたが、それと同時に私たちの理想とは違うものだとも思いました。札南書道部は代々、白い上衣と黒の袴、たすき一本で作品揮毫に挑んでいます。私たちはあくまでも「書道部」であり、本州にあるようなパフォーマンスに特化した「書道パフォーマンス部」ではありません。

 色々な面で悩み続けました。この悩みを何とか解消するヒントを得ることができないだろうかと、私は2年生の4月に、以前から興味があった茶道部にも入りました。 そこで、私はある茶道部員の所作に目を奪われました。伸びた背筋、揃った指先、彼女の一挙一動が美しく、目が離せないのです。無駄のない立ち居振る舞いは人を見惚れさせ、感動すら与えることができると知りました。

 書道の「道」、茶道の「道」。日本古来の「道」というのは、佇まいや所作、礼の精神なのではないでしょうか。この精神は日本人として、書道を嗜む一人として、とても大切なことだと痛感しました。

 札南書道部には煌びやかな衣装も演技もありませんが、「道」を重んじることはできます。部活動の中、書と道を、1年生に教えていきました。挨拶の仕方、立ち方座り方、指先、果ては目線まで細かく指導しました。また、無駄のない動きを模索し、美しさを追求しました。2年生で何度も話し合っては問題点を見つけ、その度に改善を繰り返し、ひとつのパフォーマンス(第31回YOSAKOIソーラン祭り)を乗り越え、大舞台である札幌市制100周年記念式典を迎えました。

 本番数日前にやっと完成形になり、本番数十分前まで変更点が湧くような慌ただしい状況の中、粘り強く指導し続けた「道」は、私たちが探し求めた「パフォーマンス」になりました。部員たちの堂々と伸びた背筋を見たとき、私は感動のあまり涙が止まりませんでした。

 そこからいくつかのパフォーマンスを重ねましたが、毎度毎度のハプニングや予期せぬ直前の変更に翻弄されながらも部員全員で乗り越えてきました。新型コロナウイルスの影響で一度途切れてしまった札南書道部の伝統を、私たち2年生が再構築できたとしたらたいへん嬉しく思います。また、現1年生とこれから入学してくる後輩たちが、それをさらに洗練していってくれることを楽しみにしています。

 これからも成長し続ける札幌南高校書道部を、見守っていただけたら幸いです。