山歩きのススメ
永瀬 みちる(南34期)
山歩きを始めたのは、子どもたちがそこそこ育ち、私も就職をして経済的にも安定した10年ほど前のこと。中高年になると自然に帰りたくなるものなのでしょうか。
すっかりはまってしまい、今では雨にも負けず風にも負けず、せっせと山を歩いています。
まずは六華山岳部の皆さんと歩いた過酷で素晴らしい山の記録をご紹介します。
【嵐の大雪山】とある7月初旬
梅雨の本州を脱出し、北海道で黒岳から旭岳への大縦走の予定が天気予報が今ひとつなので北鎮岳のピストンに変更して出発…いつになく残雪は多いし雨はもちろんまっすぐ立っていられないほどの暴風が吹き荒れる。暴風雨の中でも20種類ほどの高山植物がお出迎え!
しかし視界も不良で残念ながら途中撤退を決断。過酷な状況にいるはずなのに撮った写真や動画を見たらなぜか全員ニコニコ手を振っている。
そして下山途中で嘘のような青空が出現!そんなもんだよね、山ってやつは。
【爆風の那須岳】とある10月
紅葉の季節を狙って那須岳へ。紅葉を眺めつつ歩いてしか行けない山奥の温泉宿で一泊した翌日、天気予報では台風が近づいているらしい。そうでなくても強風で有名な那須岳の峰の茶屋跡付近では帽子が飛んでザックカバーも飛んで、身の危険を感じつつ1枚だけなんとか記念撮影。寒くはなかったのが幸いで、無事に下山。「もっと強風を感じる写真を撮っておけばよかった~?」と山麓酒場で呑気な会話で締めくくり。
さて…苦労をしなければ山を楽しめないのでしょうか?「山って大変なんでしょう?」「体力ないけど山に行ける?」という質問をよく受けるのですが、色々と試行錯誤した結果、そんなこともないのでは?雨にも負けず風にも負けずは卒業してもいいかな?と思う今日この頃。
そこで、山歩きのハードルを下げる3つのポイントをご紹介してみます。
◆ゆっくり歩く◆
登り道で息切れする?誰でもそうです、当たり前です!そして「山は辛い」「私は体力がない」と言う人の大半が歩くスピードが速いのかも?自分に合わせたゆっくりスピードで歩けばいいと思います。足を前に出せば必ず目的地に着きます。買いものや通勤じゃないんだから目的地までの途中も楽しんでゆっくり行きましょう。(基本的にはスポーツですので、トレーニングするに越したことはありませんが)「山を歩くことが一番効率的なトレーニング、藻岩山は最適☆」という国際山岳医の言葉を信じてます。
◆標高差を小さく◆
山の魅力は標高じゃない…とはいうものの、標高が高いところは眺めもよいもの。でも、ゆっくり歩いたら山頂にたどり着かないのでは?そうですね、なので標高の高いところから歩き始めちゃいます。バスやロープウェイで標高2,000m位まで行けば、あと数百メートルで絶景に着きます。いや、別に山頂まで行かなくても充分に絶景は楽しめたりします。麓から根性で登る必要ありますか?
おススメはバスで行ける八幡平や乗鞍岳や立山室堂、ロープウェイで行ける木曽駒ヶ岳や西穂高岳独標。北海道だと大雪山の旭岳でしょうか?(前述のとおり、私にとっては未踏で憧れの山ですが)
◆もうひとつのお楽しみ◆
山の楽しみ方はさまざま!山頂の絶景を楽しみに…なんてストイックな人は意外と少ないのでは?信仰の道を辿ったり、珍しい鳥や動植物を探したり、漁をする人もいるかも。下山後の温泉や山麓酒場も大事!山の中の温泉もいいですね。
私はお花、珍しい高山植物を探して西へ東へ。北海道は緯度が高い分、本州では高山帯でしか見られない野の花を標高の低い場所で容易に出逢えるのも大きな魅力です。利尻岳で汗をかかなくても礼文島を歩けば高山植物三昧ということに気づいた時はビックリでした!
というわけで、皆さんも山を歩いてみませんか?
永瀬 みちる(ながせ みちる)プロフィール
1965年釧路市生まれ、東京都在住。横浜国立大学卒業
会社員として丸の内で働くかたわら、土日を中心に地元の奥武蔵や奥多摩をはじめ日本アルプスなどの山々を歩く日々。年間30回程度の山行の様子をFacebookの六華山岳部に掲載中。
第98号 の記事
2021年3月1日発行