六華だより

同窓会が拓く、地方の未来

第109号

中山 昌洋(南46期)

 8月26日、私は共和町に向けて車を走らせていた。共和町に行くのは三年連続、今年で三度目だ。二年前は名前も知らなかったこの町に通うことになったのは、笠松拓史さん(南36期)から頂いたご縁によるものである。

 二年前、大学の先輩でもある笠松さんから「共和町で東大OBによる授業をやることになったんだけど、参加してくれない?」と連絡があった。教育に関心があったし、何より面白そうだったので二つ返事で快諾した。

 実は、地元の小中高校で社会学習の講師を依頼されることがしばしばあり、こうした授業は初めてではなかった。清田区北野で東大卒はレアであり、皆レアポケモンを見るように話を聞いてくれる。人前で話すのは嫌いではなく、教育現場を見られる貴重な機会でもあるため、願ったりかなったりだった。

 折角行くのだから成果を残したい。今思えば驕慢だが、二年前の私はそう意気込んでいた。しかし単発の授業でどんな効果を示せるのか。モヤモヤしていた私に、笠松さんが雑談の中で仰った。「南高も東大も、学費の多くを税金で負担してもらっている。従って卒業生は受けた恩恵を社会へ還元し、国益に資する行動をとるべきだ」。すごいカッコいいことを清々しい顔で言うなと面食らったが、この言葉が私の考えに明確な方向性を示してくれた。

 何が社会還元か。私なりに解釈し、共和町でやるべきことを「東大を身近に感じてもらう」「学ぶことで人生が良くなると感じてもらう」ことと定めた。学びを習慣化し、その先の選択肢に東大があること。決して手が届かないものではないこと。野球少年が甲子園やプロを目指すのが自然であるように、学びにおいて東大がそのような存在であって欲しい。そう考える子どもが増えることは、間違いなく地域のためになる。

 いざ子どもたちに刺さるか不安はあったが、共和町に着くと町長や教育委員長が挨拶に来てくださり、教室には多くの大人の見学者が並ぶなど、注目度の高さが伺えた。

 そして授業が始まると、不安は「杞憂」に終わった。本質的に子どもは学ぶことが好きなのだ。教育委員会の皆さんが下地を作ってくださったおかげで、前のめりに聴き、積極的に参加する子が多かった。手応えもあり、OB側にも学びの多い大成功の授業であったと胸を張って言える。

 この初回の成功と町からのご評価もあり、授業は今年で三回目を迎えた。さらに今年から、この特別授業が北海道銀杏(いちょう)会の公式行事として認められることになった。

 北海道銀杏会は、道内在住の東大卒の集まりだ。桑澤嘉英さん(南22期)が会長、尾﨑伊智朗さん(南36期)が副会長を務めている。私は2012年に札幌に戻った後、ゴルフで同組になった元JR北海道社長の小池明夫さんに「なぜ銀杏会に参加していないの?」と声をかけられ、初めてその存在を知った。

 入会後、同世代以下の会員が少ないのが気になり、東大卒を探し回って勧誘した。その動きを評価していただいたのか、2017年には理事に選出され今に至る。今でも同窓生を探しては連絡を取り続けている。

 私の活動に対し、知人から「よくやるよね」と戸惑い混じりに言われることがある。熱が入ると没頭するタイプだが、性格だけで突っ走っているわけではない。私は「同窓会」というものが大変なポテンシャルを秘めていると信じているのだ。

 同窓会への参加理由は人それぞれだが、「理屈なしに」繋がれることこそが、人の繋がりにおいて最強だと思う。私が六華に本格参加したのは令和7年度からであり、ここで六華同窓会の魅力を語る資格はまだないかもしれない。だが、六華の皆さんには同窓会の存在意義を問うまでもないだろう。

 来年、東大は創立150周年を迎え、全学を挙げてOBネットワークの強化を進めている。「同窓」という引力で集まり、広がるこのネットワークをどう活かすか。OB会がもつポテンシャルを信じ、廃れないよう尽力していきたい。「あいつはOB会バカだ」と言われるなら本望である。

 私はかねてより地方創生に関心を寄せてきたが、結局のところ最も重要なのは「人材」だ。AIの進歩で世界が過渡期を迎える今も、それは変わらない。地方創生において、共和町のように地域の学習機運を高める活動は極めて重要である。地方から優秀な人材が輩出され、その人材が素晴らしいネットワークに所属することは、その地方にとって大きな力になるからだ。「北海道には高いポテンシャルがある」と言われ続けて40年。これは「いまいち北海道は跳ねないよね」という揶揄でもある。地元の人間として、そして当然北海道のポテンシャルを信じる者として、自分なりの切り口で貢献していきたいと思う。

[あとがき]

北海道銀杏会の後輩でもある池田玲菜さん(南48期)にお声がけいただいて寄稿に至りました。改めて御礼申し上げます。また、六華〜東大卒のネットワークを作ろうと考えているところですので、興味ある方はお声がけいただけると嬉しいです。

中山 昌洋(なかやま まさひろ)

1977年 札幌市 豊平区の美園病院生まれ

東京大学農学部卒。北海道銀杏会理事。
職歴は東京でIT企業、コンサルタント。札幌に戻ってからはリフォーム会社、花火イベント会社等の役員を務める。
兄は南43期で漁師の中山英昭。