マスターズ陸上のススメ
望月 善雄(南44期)
高校時代は陸上部に所属していて、短距離・ハードルの選手でした。
中学時代は200mをやっていましたが、短距離は今も昔も陸上競技の花形、競争率が高くて各校1種目3名の枠に入れることができずに400mに転向。その後、よりニッチな400mハードル、そして最後は110mハードルもやるようになり、気づいたらいつのまにかハードル選手になっていました。当時は、北海道はほかの地域に比べて陸上のレベルが相対的に低く、特にマイナーなハードルは競技人口も少なかったため、運よくギリギリでインターハイに行くことができました。
しかし、大学でも通用するレベルでないことは自分が一番よくわかっていたため、陸上競技は高校で卒業し、もうトラックを走ることはないと思っていました。
大学時代と社会人5年目くらいまではスキーに打ち込み、その後は気が向いたときにサッカーをしたり、ランニングをするという日々。
一時期は、マラソンに出ようと月100-200キロ走っていたこともあります。しかし、サブ4(4時間切り)を目指して申し込んだ初マラソンの2020年東京マラソンはコロナで延期。
ならば、いっそ初マラソンをすっ飛ばしてサロマを走ってしまえと100㎞に申し込みますが、こちらも中止。
目標が消え、ランニングのモチベーションを保てなくなってきたところで2021年7月ニューヨークに駐在になりました。
ニューヨークでもマラソンを続けるか、迷いました。自分の実力ではサブ3.5が精いっぱい、サブ3はどんなに練習しても無理だなと思っていたのですが、そんな手の届かない記録を出す人が同世代に星の数ほどいるなんて・・・しかも大会もいつ開催されるか分からない。
マラソンは人生そのものとか、自分との闘いとか言いますが、やはりやるからには勝ちたいと思ってしまうのが自分。でも、マラソンでは勝てる見込みがない。
そんな悶々とした気持ちを抱えながら、何か新しいことに挑戦したいなとぼんやり考えていた時に、昔やっていた陸上を思い出します。
調べてみると、マスターズ陸上というのがあるらしい。世界・アジア大会などの国際大会では35歳以上(日本マスターズ陸上は満18歳以上、高校生および学連登録者を除く)を対象に、5歳刻みでクラスを分けて、同年代の人と競い合う。クラスごと、種目ごとに日本記録や世界記録がある。
日本マスターズ陸上競技連合の理念には、生涯スポーツを通じて、会員の心身の健康維持をサポートし、健康寿命の延伸や医療費削減に貢献すること、と書いてありました。
なんか、オジサン、オバサンの運動会みたいだな、というのが第一印象。
でも、日本記録を見てみると40歳台で100m10秒台とか、走高跳2mとか、とてもオジサン、オバサンとは言えないレベルの記録にビックリ!
さらにいろいろ見ていると、室内日本記録というのもありました。あれ、なんか屋外の記録よりずいぶんレベルが低いぞ?
実は、日本には室内の競技場がなく、室内日本記録は2年に一度開催される、世界室内マスターズ陸上選手権大会の記録がほとんどだからでした。
仕事や家庭の事情もあり、日本のトップ選手がみんな世界大会に行くわけではないので、日本選手の海外大会への参加率はそんなに高くなく、毎回数十人。
マスターズ陸上日本選手権が2000人の定員があっという間に埋まるのと比べると参加者の数が圧倒的に違う。
種目によっては日本記録狙えちゃうかも!?、というのも見つけました。
記録のレベルはともかく、日本記録保持者ってなんかカッコよくない!?
ということで、ニッチな種目でもいいから日本記録保持者になりたい!という邪な(?)理由でマスターズ陸上を始めたのが2021年秋、46歳の時でした。
アメリカ在住の44期同期の山崎(旧姓)綾子さんに紹介してもらった日本人ランナーの方の、そのまた紹介でNYの陸上クラブに入会したのが2021年11月。
そこからアメリカ国内の競技会や、世界マスターズ、アジアマスターズにも出るようになり、気づいたらどっぷりはまって今に至ります。
2025世界マスターズ(スウェーデン)4×100メートルリレー 3位
2025全米マスターズ ハードルで優勝
2025世界室内マスターズ(フロリダ)走り幅跳び 5位
高校時代にはほとんど練習したことがない種目や、やったことのない種目にも挑戦しています。やれば、自己ベストですから。
いろいろな競技をやることで、身体の使い方や全身が強くなるという相乗効果もあり、どんどん手を出して、ついに今年は十種競技にも挑戦しました。
当初の目標だったクラス別日本記録もいくつか残すことができ(すでに更新されたものもありますが)、競技レベル自体も徐々に上がってきて、アジアマスターズでは優勝、世界マスターズでもリレーでメダルを獲得、個人種目でも常に入賞しメダルを狙える位置まで来ました。
次の目標は、来年3月にフロリダで開催される世界マスターズ室内陸上選手権。
先日韓国で開催された世界マスターズ陸上選手権(屋外)で手が届きかけて逃した個人種目でのメダルを、次こそは獲れるように頑張ります!

2026世界マスターズ(韓国)十種競技 2日間の戦いを終えて
ただ、誰もが記録やメダルを目指しているわけではありません。
マスターズ陸上の良いところは、まず第一に同年代と競えるところ。年齢とともに残念ながらパフォーマンスは落ちていきます。若い人とはもう競えません。
しかし、年齢によるクラス分けによって、同世代のライバル達と切磋琢磨し、そのクラスでの順位を上げることを目標にしたり、自己ベストを目指すこともができます。
上のクラスに上がった年はクラス最年少になるので順位を上げるチャンスですし、記録は自動的にそのクラスでの自己ベストになるのでモチベーションが一番高い年になります。
そして、大先輩方の競技する姿を見るのはとても刺激になります。90歳や100歳の方もいらっしゃいます。
自分の足で歩けるだけでももの凄いことなのに、100mや200mを走るんです。もちろんスピードは速くありません。しかし、会場全員が声援を送ります。
その姿を見ているだけで感動の涙が溢れてきます。人が頑張る姿って、こんなにも心を打つんだと改めて感じます。
また、この年齢になって、仕事以外に打ち込めるものがあることは幸せなことだなとも思います。
マスターズの大会は、とても温かい雰囲気です。年に1回会える仲間との再会を楽しみにして参加する人がいたり、今年こそは去年の自分の記録を超えようと頑張る人がいたり、
日本記録を狙う人がいたりと、参加する目的はさまざまです。
仕事が忙しかったり、ケガをしたりして思うように練習できないこともあります。記録が伸びなくて悶々とすることもあります。
だからこそ、みんなお互いを尊重していて、まずは陸上を続けてまた会えたことを喜び、良い記録が出たらみんなで喜び、結果が出なくてもみんなで励まして、また次の大会に向けてお互い一生懸命頑張る。
頑張っている仲間がいるから自分も頑張れる、というのはマスターズ陸上の大きな魅力であり、自分が競技を続ける大きなモチベーションにもなっています。
仕事やプライベートで悩んでいることがあっても、大会に行ってみんなの顔を見るとそんなものは吹っ飛び、元気が出てきます。
陸上なんてやったことないし、ハードル高すぎるよと思われる方もいるかもしれません。
実は、50歳や60歳、中には70歳から始める人も少なくないのです。あっという間にハマって、世界マスターズで入賞したりメダルを獲ったりする人もいます。
元陸上部だけでなく、野球やサッカーなど他のスポーツをやっていた人、中には運動自体をほとんどやっていなかった人も。
大会も、大小さまざまなものが年に何度もあります。マスターズの大会もあれば、誰でも出られる市区町村の大会や記録会もあり、調べてみると意外と身近に大会があったりします。
一度マスターズの試合を観れば、あっ、これなら私でもできそうと思われるかもしれません。子供と一緒に楽しんでいる方もたくさんいます(うちの娘は残念ながら興味ないようですが)。
そして、なんと六華でもマスターズ陸上をやっている人が、実は結構います。
45期の工藤修央さんは、高校時代からずっと棒高跳を続けていて、今も若者達を相手に北海道選手権等で活躍しています。
そして、49期の成瀬拓也さんは、先日の世界マスターズで5000m銅メダル、ハーフマラソンで見事金メダルを獲得しました。
同期の石田(旧姓)しのぶさんも、マラソンに加えて昨年から短距離を始めました。
他にも、最近陸上を再開したり、これからマスターズの試合に出ようと考えている人が何人もいます。
そんな温かく、誰でも参加できるマスターズ陸上、もしちょっとでもご興味があれば、ぜひ一緒にやってみませんか?

1975年、札幌生まれ
早稲田大学法学部卒業後、総合商社に入社し、ロシア、ウクライナに7年半駐在。その後転職を経て2021年からNYに転勤、マスターズ陸上を始める。2025年に帰任し、現在は東京勤務。







第109号 の記事
2026年10月1日発行