母子留学と海外オンライン診療という挑戦
津田 桃子(南49期)
私は今、オーストラリア・ゴールドコーストで10歳の娘と母子留学の真っ最中です。日本の患者さんをオンラインで診療しつつ、南半球で生活しています。
これまで私は北海道を拠点に消化器内科医として20年、胃や大腸の内視鏡治療や便秘外来の診療を行ってきました。2019年には北海道で便秘外来を立ち上げ、薬に頼りすぎず生活習慣や排便方法を見直す診療スタイルで、500人以上の患者さんと向き合ってきました。患者さんから「便秘が治ったら人生まで変わった」と言われたときの喜びは、医師冥利に尽きます。
そんな私がなぜ突然オーストラリアに住んでいるのかという理由はシンプルで、「娘に広い世界を見せたい」と思ったからです。本人も「行ってみたい!」と乗り気だったので、じゃあ思い切って行こうと決断しました。夫と長男次男は日本に残すという決断でもあったため、周囲には驚かれましたが、「まぁ桃子ならやりそうだよね」とも言われ、半ば納得されたような顔をされました(笑)。家族は大賛成です。

2024年2月に有給をかき集め娘と渡豪し、学校や住む場所を確認し、すぐに母子留学を決断しました。2025年1月からの母子留学は、あらかじめ決めていた学校や住居で、そして生活のセットアップもアプリやネットで完結でき、chatGPTなど駆使して行いました。実は私は3度目の海外生活(10歳、30歳、今回)ですが、今まで大変と感じていた英語での生活セットアップはアプリのおかげでスムーズに行えました。海外での生活というのは思ったより簡単にできる、もっと挑戦すべきだと思いました。Year 5の新学期から登校した娘は、最初のうちこそ友達作りに少し苦慮したようでしたが、そのうちに現地の子と溶け込み、半年経った今では学校内で名前を呼ばれて”Bye~”とわざわざ挨拶のために名前を呼び合う友人が多数います。学校では”respectすること”をもっとも重要視され、先生の話を聞く、子どもたちが手を挙げて自分の意見を堂々と話す、失敗を恐れず挑戦する、そんな姿にこういう世界を経験させて良かったと思っています。

一方で私は、日本の患者さんに向けてオンライン診療を続けています。朝はパソコンの前で白衣を着て診療し、午後は娘と一緒に学校のイベントやビーチ散歩へ。診療の合間に洗濯物を干して、患者さんと画面越しに真剣な話をして、診療が終われば「ママ、今日の夕飯なに?」と聞かれる。医師と母と自分自身、その切り替えが1日の中にぎゅっと詰まっていて、忙しいけれど充実感があります。母子留学と海外からのオンライン診察がうまくいくかどうか不安でしたが、職場の協力と準備もあり、今は海辺の街から日本の患者さんとつながり、変わらず診療を続けています。テクノロジーと少しの勇気があれば、働き方は自由に作れるのだと体感しました。

もちろん、海外生活にはハプニングもつきもので、毎日なんだかんだ事件が起こります。時には「これ、本当にやっていけるのかな」と不安になる日もあります。でも、不思議と「まぁなんとかなるか」と思えるのは海外の奇跡、そして娘と一緒にサバイバルしているからかなと思い、この貴重な時間に感謝です。娘には「ママってちょっと変わってるよね、でも楽しそう」と笑われます。でも私はそれでいいと思っています。変わっている=面白い。正解が一つじゃないことを、親の背中で見せられたら、それが一番の教育になるのではないでしょうか。

この母子留学はきっと、娘にとっても私にとっても一生の宝物になると思います。そしてこれからも、「腸から健康を守る」という自分の軸はぶらさずに、少し破天荒に、新しい挑戦を続けていきたいと思っています。人生100年時代の高齢化社会では、介護の現場での排泄が社会問題になっていることはあまり知られていないかもしれません。日本を腸から元気にしたい!12月に帰国した後は、診療・講演・そして出版を目指す3軸で、医師として著者として社会活動できたらと思っています。そう心に決めながら、今日も娘と一緒にあと少しのオーストラリア生活を楽しく過ごそうと心に誓っています。
消化器内科医・便秘外来医。
講演やYouTube・Instagramで便秘解消・腸から健康を発信。日本を腸から健康にしたい。3児の母で小学生の末娘と2人、ゴールドコーストに母子留学中。
第107号 の記事
2025年10月1日発行