卒業55年 92歳の塚本謙蔵先生と巡るポルトガル
安部 雅明(南20期)
南高20期と塚本謙蔵先生
南高20期(1970年卒)は、六華百周年記念同窓会(1995年)の幹事を務めて以来、札幌・東京同期会や旅行・イベントなど多彩な親睦交流を続けてきた。わが担任恩師・塚本先生には、多数の行事に参加して頂いた。2014年、総勢20名超(家族含む)で催行したモロッコ旅にも、強引なお誘いを快諾して、参加された。地理学専攻の塚本先生は、何度も南欧、北アフリカ等に研究旅行されて、その豊富な見識から同地域の地理歴史を解説して頂き、楽しい旅を満喫した。2019年夏、代表幹事のTくんが「次はポルトガル周辺がいいかな?」と検討し始めた矢先、その思いはコロナ禍に飲み込まれてしまった。
5年越しのポルトガル旅実現
2023年10月、久しぶりに開催できた同期会後、N・Mさんから「塚本先生が旅行したい気持ちある」旨を教えられ、先生に早速アプローチ。最初は「卒寿過ぎて体力ない、迷惑かける」等のお返事だったが、「今旅にはT・M医師が参加できるので、健康チェック等は安心。長時間飛行なのでビジネスクラス利用」と説得し、奥様にも何とか同意頂けた。そして2024年5月、ポルトガル旅は先生と同期7名(女子5名、男子2名)が参加して、ようやく実現した。
今回の旅は、ポルトガルの栄華を伝える世界遺産の教会・修道院や巡礼の道(サンチャゴデコンポステーラ)などが主眼だったが、その解説は浅学の僕には無理なので、旅のエピソードをランダムに書き留める。


ポルトガルワルのワインVinho Verdeと料理の魅力
Vinho Verdeは微発泡ワインで、スッキリ爽やか。愛飲家Uさんが特に楽しみにしていた。本当に飲みやすくて、しかもボトルで14ユーロ前後(現地レストラン価格)の安さ。皆さんで毎日2本飲んだ。また魚介料理は日本に似た味風味で、美味しい。そしてユーロ圏内では物価が安く、暮らしやすいために、他国から移住が増えているらしい。


欧州にはトンボがいない?
横浜から参加したK・Mくんにとって、旅の最大目的が「トンボ発見」であった。トンボ愛好家である彼は「欧州は気候と地域開発でトンボの生息数はかなり少ない」との解説。毎日未発見だったが、彼の執念が実り、ブラガ山頂の教会にある鍾乳洞池で「クロスジギンヤンマ」を見事発見!やはり教会での奇跡は起きたようだ。5月春にトンボを見たのは、僕の人生初だった。

塚本先生の驚異の回復力・記憶力
実は先生は、今旅OKを頂いた2023年12月に何と交通事故に遭遇していた。聞いたときは、「旅はもうダメか」とショックだったが、先生は一切骨折もせず、打撲だけ。「警察の話では、衝突してきた大型SUVのバンパーが凹んだのに、90代の被害者が骨折もない」と驚いていたと先生は笑って話した。本当に先生の精神肉体の強靭さと健脚は、旅でも発揮された。また記憶力にも舌を巻いた。ロカ岬(欧州最西端)では、「30年前には、崖下からケーブルカーで来たはずだと思う。」との先生の記憶は実に正確だった。


同期女子は皆優しい
無事帰国した夜、羽田空港のホテルで、打ち上げ。若きホテルマンに乾杯のシャンペン栓抜きを依頼したが、コルク栓は天井直撃。オドオドした彼は、人生初めてのシャンペン栓抜きだった。女子一同は「大丈夫心配ない」と慰めていた。彼女たちは、同期男子以外(若いイケメン)には優しいのだと、やっと気づいた。彼女達のパワーと優しさで旅を満喫できたので、感謝しかない。




人生の地理学
実のところ僕は、塚本先生の地理授業を一度も受けていない。だから学問としての地理学を先生から学ぶ機会がなかった。でも人生としての地理学ならば、卒業後55年間も先生に学んできた。それは学問ではないので、答えは個人の感性で千差万別、劣等生には嬉しい限りだ。今後も人生の地理学の巡路範囲を塚本先生、南高20期の仲間と共に拡げながら、楽しみたい。
安部 雅明(あべ まさあき)
1951年札幌生まれ。
1967年兄が通う南高入学。
1971年東京憧れ早稲田大学入学。
1979年母の帰札下命で地元就職。
2007年独立実現で会社設立。
2020年引退。 現在 猫と遊び、ススキノbar巡りの日々。
第106号 の記事
2025年3月1日発行