六華だより

かがやけ、南高セイカツ ~ 完全オンライン開催を振り返る

第101号

東京六華同窓会2022実行委員会(南38期、48期、58期)
実行委員一同

 2022年6月26日午後2時6分。配信をスタートして1時間余り、徐々に伝統の大扇を後進に託す時間が近づいてきた。司会者がスタッフから手渡されたメモを笑顔で読み上げる。「たくさんのコメントをいただいています」。学校林や雪戦会を取り上げた映像コンテンツについて「南高版『映像の世紀』ですね…」「在校生も大笑いして楽しみました」。もう一人の司会者がうなずく。「本当に貴重な映像でした。現役高校生も!うれしいですね」
 東京六華同窓会2022懇親会はこの日、完全オンライン開催により3年ぶりに復活した。同時視聴者230ユーザー余り、累計再生回数1,200回超。先行きが予見できないコロナ禍という特殊状況の下であっても、参加者それぞれが思い思いのスタイルで楽しみつつ、六華の絆を深める場を提供できたのではないかと考えている。復活へのお力添えをいただいた同窓生の皆様方にあらためて感謝を申し上げつつ、今年の懇親会の様子を振り返りたい。

オンラインで開催された東京六華同窓会2022懇親会。司会は保坂麻子さん(南38期、旧姓近藤)=右=のほか、アナウンサーの石井麻由子さん(NHK放送研修センター専門委員)=左=に依頼した

 2020年2月初旬。都内の飲食店の一角に、南38期の首都圏在住者9人が顔をそろえた。新年会を兼ねた第1回打ち合わせ会議。当初予定では、38期が当番を務める同窓会は2021年6月に開催。近年会場として使われてきた施設が閉鎖されることから、かつての会場だった千代田区飯田橋のホテルでの実施を前提に、首都圏のみならず札幌在住の同期を含めた大勢を巻き込んで実行委員会を組織しようと申し合わせた。そのときは、新型コロナウイルスは、どちらかといえばまだ隣国の話だった。
 このキックオフミーティングから1週間後、国内初のコロナ死が発生。クラスター、ロックダウン、オーバーシュート…。耳なじみのなかった横文字がいつしか普通の言葉になった。同年夏には第2波、晩秋から翌年2021年春にかけては第3波が日本を襲った。37期、47期、57期による2020年の同窓会はいったん9月に延期された後、2021年6月への再延期を経て中止となった。

 緊急事態のさなかで東京五輪が行われ、デルタ株が猛威を振るった第5波が沈静化した2021年秋。「今は落ち着いたかもしれないが、またいつ次の波が来るかわからない」「オンラインは一方的すぎる。他に方法はないかもしれないが、どうしたら『参加した』という感覚を得られるだろうか」。インターネット会議システムを使って次々に意見を述べ合ううちに、方向性が見えてきた。「『札幌南の卒業生でよかった』『同窓生であることがうれしい』。そんな思いを共有できるイベントにしよう」。いわば“六華のDNA”を感じる場をつくるための最善策を追求し「いかなる社会情勢下にあっても2022年に実施する」との原則を打ち立てた。
組織は機能別に簡素化した。実行委員長、事務局長のもと、同窓会事務局との連絡から同窓生への周知全般までを担う「ネットワーキングチーム」、思いを共有する手段を作り出す「コンテンツチーム」、協賛金集めから会計事務までを行う「ファイナンスチーム」、特設の懇親会Webサイトといったオンライン開催の基盤を整える「インフラチーム」の4チームが動き出した。

 テーマは「Shine on, school days! かがやけ、南高セイカツ!」。母校での思い出を持つ同窓生も、今母校に通う在校生にとっても、高校時代が輝く時であってほしいとの思いを込めた。事前申し込み不要、参加費無料。あらためて母校を想うきっかけとして、同時に在校生が今を輝くために使ってもらおうと、寄付を募ることにした。寄付は千円からで、校章をあしらったオリジナルTシャツ付きの5千円コースも用意した。原則、懇親会Webサイトからのクレジットカード決済とし、事務経費を極力抑えた形とした。これらはファイナンスチームが担当した。
 当日の進行はコンテンツチームを中心にタイムテーブルを作成した。冒頭の20分は、これまでの式次第を継承した。物故会員への黙祷、東京六華同窓会長のあいさつ、六華同窓会長と札幌南高校長の祝辞、書面決議で行われた総会結果報告、功労者表彰と進めた。あいさつ、祝辞は東京六華同窓会事務局を通じてビデオメッセージを依頼した。
 その後は映像コンテンツを楽しむ懇親会。堅忍不抜、自主自律に代表される“六華魂”を数々の映像を通して再発見する「六華タイムトリップ」、同窓生から寄せられた動画をリレー編集した「みんなでつなぐ校歌斉唱」を準備した。
 「六華タイムトリップ」は実行委員2人がナビゲーターとなり、古い写真や懐かしい映像をひも解きながら、世代を超えて母校が持つ魅力を再発見する映像コンテンツ。大勢の市民が見物に集まった戦前の雪戦会、下草刈りなどを手伝った学校林、学園紛争など紹介した。同窓生から提供を受けた秘蔵映像や、札幌の六華同窓会事務局が保管する貴重な映像資料を活用した。さらに札幌南高校放送局から今の母校の姿を収めた映像集を提供していただいた。

六華タイムトリップ。実行委員2人をナビゲーターに、時間を旅しながら15分間、秘蔵映像を紹介した


「みんなでつなぐ校歌斉唱」は、多くの同窓生に登場してもらうことで、会場で一緒に歌っている雰囲気づくりを狙った。札幌一中、札幌南高校の校歌を歌っている動画を、Facebookグループ「六華応援ひろば」などを通じて募ったところ、70人以上の動画が集まった。中には弾き語りの姿や、赴任先のインドネシアの民族衣装に身を包んで歌う姿を投稿してくれた同窓生もいた。また、東京六華の事務局会議にもビデオを持ち込み、出席者に声を合わせていただいた。

同窓生の歌う姿をリレーした「みんなでつなぐ校歌斉唱」

 懇親会が一方的に映像を見てもらうだけの時間にならない工夫も試みた。
YouTube Liveによる配信中に、視聴している人からコメントを書き込んでもらい、配信の合間に司会者が紹介するスタイルとした。ライブ配信中にチャットメッセージ179件が寄せられた。発信スタジオでは実行委員がFacebookにも目を通してコメントを吸い上げ、メモ紙にして司会者に手渡した。

また、懇親会終了後にオンライン会議システムZOOMミーティングによるグループ別2次会を準備。こちらはそれぞれのグループ責任者からの事前申込制とした。期別では南19期から58期まで、そのほか有志1グループの計10グループによるオンライン2次会が催された。

 ライブ配信では、あらためて寄付の呼びかけも行った。返礼品のTシャツ代などを差し引き、さらに運営資金の残りを加えた寄付原資額は110万円を超えた。現在、教育資材などの購入物品を札幌南高校で選定中であり、使途が決まり次第、送金する予定だ。

完全オンラインという初の試みだったが、東京六華同窓会、札幌の六華同窓会、札幌南高校の教職員と生徒たちという多くの方々に支えられ、無事、伝統の大扇を次期実行委員会(39期・49期・59期)に引き継ぐことができた。寄せられた多くのコメントを読みながら、あらためて六華の伝統とつながりを感じる場が提供できた喜びを感じている。

この稿の締めくくりとして、多くの協賛者様にもあらためて感謝申し上げたい。会費を徴収しなかった今回、協賛者様の経済的・精神的応援がなければ、これら企画は実現できなかった。皆様のご支援、ご協力、誠にありがとうございました。

* * * * *

 配信の模様は以下の懇親会Webサイトから視聴できる(2023年6月閉鎖予定)。

https://tokyorikka2022.club/