六華だより

趣味川柳

第95号

柴田睦郎(南24期)

 皆様初めまして北海道医療大学(浅香正博学長 南16期)病院小児科「しばたむつお」です。まずこの会報に趣味の川柳について記事を書かせていただくことになった偶然について説明させていただきます。数年前特別支援教育(病弱)の非常勤講師として北海道教育大学札幌校の控室で初対面の講師の方に自己紹介をしました。身分、出身をお話ししているうちに大学は北大、高校は札幌南と同窓とわかりさらに先生の前職が私の亡父と同じ道立高校の理科教師と偶然の一致が重なりました。お話しをするうちにお互い理系のはずなのに趣味が短歌・俳句vs川柳とわかり著書の交換までするようになりました。この方が会報委員長の坂田義成先生でした。坂田先生からは句碑や名歌・名句ゆかりの地を訪ねる紀行文集シリーズを頂き、私は六十歳を越えて出版した川柳句集「あなたらしいとほめられるけなされる」をお贈りしました。(同書は別に図書館の司書成田康子さんにお願いして同窓生の棚にも所蔵していただきました。)

 川柳(五七五の定型短詩)は俳諧・連句の修行すなわち七七の前句へ五七五の付け句を付ける雑俳の一種である前句付の選者柄井八衛門の号「川柳(せんりゅう)」に由来する文芸ジャンル名です。成立上似たものに都都逸(七七七五、由来は都都逸坊)があります。同じ五七五の形式でも俳句と川柳には内容の違いがあります。俳句は「俳」諧の発「句」の略です。発句には季節や場所を含みますから、俳句は自然情景を詠み季節のイメージを表す季語があり、かつ切れ字を入れるか句切れを持つことを要すといわれます。対して川柳は平句(俳諧・連句における発句・脇・第三・挙句以外の句、挙句はあげくのはてにとして今でも使われていることば)で特に約束事はなく人間社会を詠むと対比されます。
 川柳号は継承され当代は十六世です。本年は初代川柳(柄井八衛門)生誕三百年に当たります。私は以前から十六世と知り合いなので一泉さんと呼んでいますが(私の句集の表題「あなたらしいとほめられるけなされる」は一泉師の父上の尾藤三柳師が大塚薬報という雑誌の柳壇で選んで下さった句です)正式には庵号も添えて十六代 櫻木庵 尾藤川柳師と呼ぶべきでしょう。

 迂闊なことに後日気づいたのですが、私が在校時漢文を教えていただいた教頭の金箱戈止夫先生は俳句結社の「壺」の主宰、お習いはしなかったものの社会科の塩見一夫先生は号「一釜」で有名な北海道川柳研究会の機関誌「道産子」の主幹と、北海道の川柳・俳句の二大巨頭が教壇に立たれていたことになります。

 私は中学の一年だけ旭川の教育大学付属中学に通いました(二年の時に転校して卒業はパークゴルフ発祥地の町立幕別中学校です。)そこには中学校としては珍しい落語クラブがありNHKの「あすは君たちのもの」という全国の中学生のユニークな活動を紹介する番組に出演しました。ゲストは先代の古今亭今輔師と成蹊大学の近世文学研究の成瀬正勝教授でした。この番組では最後にサトウハチロー先生(佐藤愛子さんのお兄さん、お父さんは作家佐藤紅緑)が詩を作ってくれます。我々についての詩は「タイトル 笑え笑えの歌:中学生の落語研究会に拍手する」で印象的な一節は「工作室の即席高座」です。顧問が技術科担当の宮田浩先生で部室が実習室であるという事情を反映しています。文化祭では、私は三笑亭笑三作の「家庭教師」を短く口演しましたが先輩たちは皆古典落語を披露していました。
 そんなこともあり江戸文化や言葉遊びに関心を持ち興津要編の講談社文庫「古典落語」や安楽庵策伝作、鈴木棠三編の「醒睡笑」を読んでユーモアや言葉遊びに関心を深めていきました。川柳については父親の書架にあった岩波新書の山路閑古(もともとは化学者)著の「古川柳」を読むにとどまり、本格的に川柳を始めたのは四十歳でNHK学園の通信教育入門編を受講してからになります。それまで通信教育は必要に迫られて統計学、校正の二科目を修了したことがありました。なぜ四十歳に趣味の通信講座を受講したかは単純で、六十歳で定年するとして趣味のない老後は寂しい、二十年努力すればどうにかなっているに違いないという予想です。川柳には約束事が無いことも選択の理由でした。
 その後私が加入した川柳結社は「きやり」といい伝統川柳を旨とする吟社で来年四月に創立百周年の記念式典を開催することが決まっています。社是は定型の五七五で口調の良い明るい句を詠むということです。私は社是に従って定型句を作っていますが、別に小児科医として柳誌に「きやりの中の親子・家族」と題する句の書き抜きと解説を連載しています。五年ごとの記念句集(80・85・90・95周年)と五十年史、五十五年史、六十年史と七冊分の記事を書き上げました。
最後に最近の作品をご紹介します。(きやり令和元年六月号 100巻6号)

苦情処理業務改善顧客増

 毎月の定例会議で「患者さんの声」が紹介され対策が話し合われます。 苦情の背景を探りCS(顧客満足度)を高めようと努力しています。
 時にはいわれのない非難に悲しい思いを抱きます。

新人の同僚増えて活気付き

  幾人もの方が常勤の職場へ転職するためお辞めになりました。正規職 
 員を目指して辞めた方々の補充の新人は当然のように非正規です。  
 非正規職員の極一部が登用され常勤職員になります。キャリアを積み
 スキルを磨いた優秀な非正規職員が常勤ポストを得て転職するという
 サイクルがあります。付属病院も大学自体の総定員に縛られており仕
 方のない事かもしれません。

非常勤再契約が気にかかり

 常勤、契約、パート、派遣など勤務形態が種々の職員が一緒に働いて
います。

無職の子社長になると知らせあり

 同窓の娘が株式会社を立ち上げました。

詳細は知らず応援する起業

 クラウドソーシングの会社とのことです。

柴田睦郎 プロフィル

昭和30年5月20日生まれ
昭和55年3月 北海道大学医学部医学科卒業
昭和55年4月 同小児科医会入会
現職 北海道医療大学病院小児科医長 診療教授

川柳きやり吟社 社人