札幌の隣町、江別をご存知ですか?
岡 英彦(南41期)
私の住む江別は、札幌の隣町ですが、おそらく多くの南高関係者にとってそれほど馴染みのあるまちであるとは言い難いでしょう。高校受験における長年にわたる学区制限に加え、通学距離の問題があり、江別から通う南高生は近年までほとんどいなかったと思われます。
かくいう私も中学・高校時代は札幌在住であり、江別に住んでいたのは小学時代までです。高校卒業時にはまさか江別に戻ってくることになるとは夢にも思っておりませんでしたが、気が付きますとちょうど人生の半分をこのまちで過ごしていることになります。
進学で北海道を離れ、東京でごくごく普通のサラリーマン生活を送っていた私にとって、地元に戻ってくるきっかけとなったのは、何とはなしに社会人向けの公共政策大学院へ通ったことでした。公共政策大学院には、当時、地方議会に参画し始めていた私と同年代の地方議員が数多く勉強に来ていました。地域課題の解決に奮闘する彼らの姿を見て、自分も北海道でそのような形で地域のために働くことができるのではないかと思ったのです。その後、思い切ってサラリーマンを辞め、身一つで政治の世界に飛び込むことにしましたが、幸いにして、北海道の地方都市においても、多様な議員を受け入れる環境が整いつつあったこともあり、2007年から2期8年間、江別の市議会議員として務めさせていただくことができました。
地域の様々な課題の中で、特に地方全体において大きな課題と認識されていることに地域のPRがあります。大都市圏においてはあまり意識されないことですが、地方においては住んでもらうにせよ、訪れてもらうにせよ、その地域自体の認知度を高めることが重要です。そんな中で私が関わっている活動を2つほど紹介いたします。
まずは、江別のご当地キャラクターであり、江別観光特使にも任命されている「えべチュン」の活動です。「えべチュン」は、頭がレンガで、手に江別名産のハルユタカの小麦の穂を持ち、感動の涙を流しているレンガ鳥という設定のキャラクターです。レンガは北海道遺産にも認定されている江別の歴史的にも重要な産品であり、ハルユタカは幻の小麦とも呼ばれるパン用国産小麦の先駆けとなった小麦で、こちらも江別の特産品です。「えべチュン」は江別をPRする目的で市内の異業種交流会のメンバーが集まり2008年につくったもので、「えべチュン飼育係」という団体名で活動しています。「えべチュン」の着ぐるみが年間80回近く市内・市外・道外のイベントに参加しているほか、市の広報誌への掲載など年間30近くの団体にキャラクターを利用頂いています。大きな効果をあげている連携例として「えべチュン」とコラボした商品である「えべチュンラーメン」と「えべチュンサブレ」があります。「えべチュンラーメン」は市内に本社と工場を構える株式会社菊水で作られている、ハルユタカなどの江別産小麦を100%使った大変贅沢なラーメンです。菊水独自の寒干し製法という方法でつくられており、一般的な袋入りラーメンの中では日本一美味しいとも噂されています。パッケージデザインも市内からデザインを公募し選定されました。また、市内の珈琲と洋菓子の専門店ノースライブコーヒーでつくられている「えべチュンサブレ」は、小麦とバターはもちろんのこと「えべチュン」の焼き印も市内の金属造形作家が作成したというすべてが江別産のサブレであり、お土産として大変人気が出ています。江別では近年、江別産の農産物を使った企業の商品開発や、江別産の小麦を使ったパン屋やレストランが増えてきており、食のまちとしても認知を広めようとしています。
もう一つが、「のっぽろ七丁目放送局」という地域のインターネットテレビでの活動です。「のっぽろ七丁目放送局」は2009年に「地域を元気に!」をスローガンにスタートした地元のインターネットテレビ局で、毎週、水曜日の夜にインターネット上で生放送を行っています。市内の様々なメンバーがパーソナリティーとして地域情報を発信しています。数年前からは私もパーソナリティーの一人として「岡英彦のガバナンス江別+」という番組を持っており、元々は毎月だったのですが現在は不定期で年に数回出演しています。テーマは、江別の市政に関する話題や、社会で話題となっている問題などを取り交ぜてお話ししています。「のっぽろ七丁目放送局」は有志が手弁当で運営しており、熱意があればこそ続いているものだと思います。
また、地域のPRとは趣が異なりますが、学生向けに政治を身近に感じてもらう活動も広く進めてきました。政治家へのインターンシップを行う学生団体のアドバイザーを行ったり、大学の講義でお話させて頂いたりしてきました。若者の投票率、特に地方選挙における投票率は大変低くなっており危機感を持っています。2016年から18歳選挙権がスタートし、高校生も選挙に行く時代になりました。民主主義社会の一員としての役割を担っていくための公民教育は我々団塊ジュニア世代には全くと言ってよいほどなされなかったと思いますが、これからの世代には大いに期待しています。南高出身の地方議員も少なからずいらっしゃいますので、高校時代にそういった方々と直に接する機会というのがあっても良いのではないでしょうか。
北海道に戻ってきて10年近く経ちますが、改めて感じることは、地域の現場の個人や企業の方々はそれぞれ非常に頑張っておられるということです。東京目線で見ると、地方は創意工夫も努力もしていないように考えがちですが、地域の中で社会的な役割を担うという意味においては、社会的資源が少ない地方の方がよっぽど頑張っているということが言えると思います。地域の団体やイベントの運営であったり、まちのPRであったりと本当に努力していると思います。
江別も北海道の他の地域と同様に人口減少が始まって久しいですが、札幌圏の中では子育て世代の転入が最も多くなっており、北海道全体の中ではまだまだ恵まれた環境に位置しています。人口減少自体は避けられませんが、小さくともキラリと光るまちとして南高出身者にも住んでみたいと思ってもらえるように、今後も地域の人たちと一緒に頑張っていきたいと考えています。
第91号 の記事
2017年10月1日発行